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2023 Fiscal Year Research-status Report

Empirical study on the usefulness of financial statement footnotes

Research Project

Project/Area Number 21K01782
Research InstitutionKobe University

Principal Investigator

音川 和久  神戸大学, 経営学研究科, 教授 (90295733)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2025-03-31
Keywords注記事項 / 投資意思決定有用性 / 証券市場
Outline of Annual Research Achievements

企業会計審議会が公表した「税効果会計に係る会計基準」によれば、繰延税金資産の回収可能性は毎期見直し、将来の税金負担額を軽減する効果が認められないと判断される部分は、評価性引当額として繰延税金資産から控除しなければならない。繰延税金資産の回収可能性は、タックス・プランニングや将来加算一時差異のほか、企業本来の収益力に基づいて判断される。したがって、経営者が将来の収益力に関する自分自身の私的情報を考慮して回収可能性を判断しているかぎり、繰延税金資産の評価性引当額は将来業績の有用なシグナルになると考えられる。しかし、その一方で、評価性引当額は、経営者による利益調整の手段として用いられるかもしれない。さらに、企業会計基準委員会が公表した適用指針では、過去および当期の業績を主な要件として企業を分類した上で、繰延税金資産の回収可能性を判断する具体的な取扱いが定められている。もし回収可能性の判断にあたって、経営者の裁量または過去および当期の業績に基づく画一的な判断が強く作用しているならば、繰延税金資産の評価性引当額と将来業績の関係は強力でないかもしれない。そこで、繰延税金資産の評価性引当額と当期または将来の業績水準の関係を実証的に分析した。その結果、評価性引当額と当期業績水準にはマイナスの相関があり、当期の税引前当期純利益が低い企業ほど、評価性引当額の水準や繰延税金資産小計に占める割合が高くなる傾向にあることを例証した。また、評価性引当額と将来業績水準にもマイナスの相関があり、評価性引当額の水準や繰延税金資産小計に占める割合が高い損失計上企業ほど、将来業績の水準が低迷する傾向にあることを析出した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

まず、税効果会計基準の注記事項については、当期の損益計算書で赤字を計上している企業を調査対象として、繰延税金資産の評価性引当額と将来業績の関係を実証的に分析した。日本でも、評価性引当額に関する実証研究の蓄積がある。しかし、それらの多くは、利益調整という観点から調査を行っており、将来業績との関係を明示的に分析した研究は少ない。さらに、繰延税金資産の評価性引当額は、貸借対照表や損益計算書といった財務諸表本体ではなく、注記情報を参照しなければならず、一般的な商業用データベースには収録されていない。そのため、先行研究は、繰延税金資産の評価性引当額のデータを手作業により収集している。それに対して、EDINETからダウンロードした有価証券報告書のXBRLファイルを用いて、税効果会計の注記事項に関するデータベースを構築したことも特筆すべきと考える。次に、金融商品会計基準の注記事項については、保有資産の中で金融資産や金融負債が相対的に重要な割合を占める銀行業に調査対象を限定した上で、2022年3月期と2023年3月期の有価証券報告書から、金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する注記事項のデータを収集する作業に着手した。しかし、データ収集プロセスにおいて、デリバティブ取引などについて複数の開示パターンが存在することが分かったので、銀行間で異なる開示パターンをどのように調整し、データベースを構築すればよいのか、時間をかけて検討する必要が生じた。そのため、各銀行の有価証券報告書を逐一確認しながら、開示パターンを考慮した上で、注記事項の金額データを一つ一つ収集した。

Strategy for Future Research Activity

まず、税効果会計基準の注記事項については、繰延税金資産の評価性引当額は当期の業績水準のみならず、将来の業績水準とも有意な相関関係があることを析出した。しかし、経営者が繰延税金資産の回収可能性を判断するときに、当期または将来の業績水準のいずれを相対的に強く考慮しているのかは検証できていないので、その点に関する追加分析を行いたい。また、日本企業の多くは決算発表時に経営者による次年度の利益予想を開示しているという特徴があるので、繰延税金資産の評価性引当額と経営者利益予想の関連性についても追加の分析を行いたい。次に、金融商品会計基準の注記事項については、金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する注記事項を観察すれば、それぞれの銀行が客観的な公正価値測定ができる金融資産や金融負債を相対的に多く保有しているのか、それとも公正価値を測定するには主観的な判断や見積りを要する金融資産や金融負債を相対的に多く保有しているのかを識別することができる。したがって、各銀行が保有している金融資産や金融負債のクロスセクショナルな差異が会計情報の価値関連性やリスク関連性、投資家間の情報の非対称性、証券アナリストによる将来業績の予想などに対して、どのような影響を与えているのか否かを検証したい。さらに、実際のデータ収集プロセスにおいて確認されたように、金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する注記事項の開示パターンは銀行間でまったく同じというわけではないので、その理由を探るため、開示パターンの決定要因も分析したい。

  • Research Products

    (5 results)

All 2023

All Journal Article (5 results)

  • [Journal Article] 繰延税金資産の回収可能性の判断に関する実態調査2023

    • Author(s)
      中島隆広・音川和久
    • Journal Title

      神戸大学大学院経営学研究科ディスカッション・ペーパー・シリーズ

      Volume: 2023-06 Pages: 1-35

  • [Journal Article] 繰延税金資産の評価性引当額に関する予備的考察2023

    • Author(s)
      中島隆広・音川和久
    • Journal Title

      会計

      Volume: 204巻1号 Pages: 85-96

  • [Journal Article] 決算発表に対する投資家の注文行動に関する実証分析2023

    • Author(s)
      森脇敏雄・音川和久
    • Journal Title

      奥村雅史(編著)『デジタル技術の進展と会計情報』(中央経済社)

      Volume: - Pages: 213-238

  • [Journal Article] 決算発表翌日の価格発見機能に関する実証分析2023

    • Author(s)
      森脇敏雄・音川和久
    • Journal Title

      奥村雅史(編著)『デジタル技術の進展と会計情報』(中央経済社)

      Volume: - Pages: 239-266

  • [Journal Article] 財務諸表の比較可能性とアナリスト予想2023

    • Author(s)
      若林公美・音川和久
    • Journal Title

      会計

      Volume: 204巻4号 Pages: 71-81

URL: 

Published: 2024-12-25  

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