2022 Fiscal Year Research-status Report
わが国地域経済の持続性保全と持続的成長のための産業クラスターBSC導入・運用研究
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21K01789
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
宮地 晃輔 長崎県立大学, 経営学部, 教授 (60332011)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 海事産業(海運業・造船業) / 脱炭素化 / ポセイドン原則 / IMO(国際海事機関) / 船舶金融(シップファイナンス) / 管理会計 / ライフサイクル・コスティング(LCC) / 原価企画 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022(令和4)年10月29日~2022(令和4)年10月30日の期間に開催された日本社会関連会計学会第35回全国大会における統一論題報告(統一論題テーマ:脱炭素化への経営・会計問題)において、第1報告者として報告論題「脱炭素化に向けた海事産業の動向とポセイドン原則の会計問題」(開催校:九州大学・長崎県立大学:ビデオ会議システムZoomによる開催)の研究成果発表を行った。本報告では、海事産業の脱炭素に向けた取り組みの動向を確認したうえで、2019年 6月に気候変動に関する取り組みを船舶融資(シップファイナンス)の意思決定に組み込むための原則として発足したポセイドン原則(The Poseidon Principles)の運用から導かれる会計問題について、その内容を論究することを目的とした。本報告では、以下の3点の提案を行った。 ①ポセイドン原則は、署名金融機関のシップファイナンスにおいて、融資期間における対象船舶(個船)のGHG(Greenhouse Gas)排出を測定することから、海運会社等の資金需要者による船舶の脱GHGへのスピードを加速させることが期待される。 ②GHG排出低減に向けた船舶の企画・設計・開発・建造を進化させるにあたって、管理会計技術である原価企画(Target Costing)やライフサイクル・コスティング(LifeCycle-Costing)の活用により有効性が発揮できるのではないか。 ③船舶建造による原価企画の実践事例として、常石造船(広島県福山市)、佐世保重工業(長崎県佐世保市)の原価企画船がある。船舶に対しGHG排出削減が求められる以上、顧客志向と原価低減を製品の源流段階から追求する原価企画に今後、海事産業(海運業・造船業)からの関心が高まることが期待され、管理会計研究者はそのためのムーブメントを引き起こす情報発信を行う必要があるのではないか。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題のリサーチサイトである今治海事クラスターに対して、当該クラスターに参加するプレイヤー全体の競争力を、BSCを用いて高めていくための方向性についてインタビュー調査等を行う予定であった。具体的な調査項目としては、「今治海事クラスターでのBSC導入・運用のコントローラーをどのように考えるか」、「BSCにおいて共有すべき戦略理解についてどのように考えるか」、「クラスターでの戦略の進捗状況の評価をいかなる仕組みで行うか」、「クラスターでの全体戦略と個別組織の戦略の整合性を持たせるための具体的な方法として何を考えるか」等があった。 新型コロナウィルス感染症の影響により、本件インタビュー調査等が予定通りに行うことが出来なかった。このため2023年度では、2022年度に実施できなかったインタビュー調査等の計画に対し、必要な修正を行い再度設定したうえで実行する。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年5月25日(木)・26日(金)・27日(土)の3日間において、今治市を会場に開催される国際海事展バリシップ2023(BARI-SHIP IMABARI MARITIME FAIR)に参加をして、今治海事クラスターの造船企業、舶用機器企業、海運会社(船主)の最新の動向を把握して、本研究課題の推進のために必要な情報を整理する。また、バリシップ2023における日本舶用工業会スマートナビゲーションシステム研究会セミナーに参加を行い、船舶からのGHG排出削減と自動運航船に関する動向を把握して、本研究課題の推進のために必要な情報を整理する。 2022(令和4)年10月29日~2022(令和4)年10月30日の期間に開催された日本社会関連会計学会第35回全国大会における統一論題報告(統一論題テーマ:脱炭素化への経営・会計問題)において、第1報告者として「脱炭素化に向けた海事産業の動向とポセイドン原則の会計問題」(開催校:九州大学・長崎県立大学:ビデオ会議システムZoom による開催)の研究成果発表を行っているが、その内容を日本社会関連会計学会『社会関連会計研究』第35号に研究論文として投稿する。投稿時期は、2023年8月を予定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、2022(令和4)年度に予定をしていた今治海事クラスターの主要プレイヤー(海運企業、造船企業、今治地域銀行、今治地域教育機関・行政機関)に対するインタビュー調査等が出来なかったことが理由としてあげられる。 2023(令和5)年度はこれをバックアップするために、2023年5月25日~27日に今治市で開催される国際海事展バリシップ2023(BARI-SHIP IMABARI MARITIME FAIR)への参加による今治海事クラスターの主要プレイヤーに対する調査をはじめとして、インタビュー調査等を行う予定である。この活動のために旅費を中心とした経費の支出を、2023年度に予定している。
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