2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K01808
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
角ヶ谷 典幸 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (80267921)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | IFRS / 会計上の判断 / グローバル化圧力 / ローカル化圧力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、各国の会計制度は会計基準の統一化を牽引する「グローバル化圧力」と結果的に会計実務の多様化を導く可能性がある「ローカル化圧力」を同時に含む相互浸透の過程として形成されてきたという仮説を、会計上の判断に関する先行研究の整理、会計基準の統一化(グローバル化)と会計実務の多様化(ローカル化)に関する議論の整理、ならびにグローバル化のみならずローカルな制度の影響を受ける会計人(公認会計士など)の専門的判断に関する科学的証拠の提示を通じて、国際会計領域に新たな(独自的かつ独創的な)知見を提示することである。2023年度は主に以下の事柄を明らかにした。 日本基準とIFRSとの間に差異がみられる会計基準は何かを明らかにした上で、投資家はそのような会計基準に対してどのような判断を行うのかについて調査した。分析の結果、両者の間に最も大きな差異がみられるのはのれんの会計基準であること、のれんは追加的な正の価値関連性を有することを明らかにした。また、IFRSと日本基準ベースの純利益の調整額は、日本基準の会計数値に対して追加的な負の価値関連性を有することを明らかにした。 そのほか、女性の筆頭サイニングパートナーの専門的判断に関する学会報告を行った。具体的には、女性は男性の筆頭サイニングパートナーに比べて、修正監査意見を提出する傾向にあるのか、あるとすれば、どのような場合なのかについて学会報告を行った。分析の結果、女性の筆頭サイニングパートナーは、男性の筆頭サイニングパートナーよりも修正監査意見を発行する頻度が高いこと、また監査チームの規模が小さく、女性のサイニングパートナーが優位な立場にある場合には、男性のサイニングパートナーに比べて修正監査意見を発行する頻度が高くなることが明らかにされた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は本研究課題の遂行計画に沿って研究を進め、その成果として国際学術誌(Accounting, Economics, and Law: A Convivium)上で、IFRSと日本基準との差異に関する論文(Impact of Voluntary IFRS Adoption on Accounting Figures: Evidence from Japan)を公表することができた。また、査読誌(会計プログレス)上で、投資家の判断に関する論文(IFRS の任意適用は会計情報の価値関連性に影響を与えるのか)を公表することができた。さらに、韓国国際会計学会の年次大会およびヨーロッパ会計学会のワークショップにおいて公認会計士(女性筆頭サイナー)の判断に関する研究成果の報告を行うことができたため、おおむね順調であると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度も引き続き、各国の会計制度は会計基準の統一化を牽引する「グローバル化圧力」と結果的に会計実務の多様化を導く可能性がある「ローカル化圧力」を同時に含む相互浸透の過程として形成されてきたという仮説を検証する予定である。 同時に、これまでの研究成果を総括し、最終報告書を作成する予定である。
|
Causes of Carryover |
現在執筆中の論文を完成させるためには、より精緻な研究手法を用い、追加的な情報収集が必要であり、時間を要するために、次年度使用額が生じました。 研究計画を遂行するために、共同研究者との打ち合わせを行い、インタビューを実施したいと考えています。
|