2022 Fiscal Year Research-status Report
デジタル社会に求められる職業会計士の役割・能力と今後の会計教育のあり方
Project/Area Number |
21K01816
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
加納 慶太 県立広島大学, 地域創生学部, 講師 (40796067)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 周子 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (10610181)
菅原 智 関西学院大学, 商学部, 教授 (40331839)
吉良 友人 岡山商科大学, 経営学部, 准教授 (70779967)
児島 幸治 関西学院大学, 国際学部, 教授 (80388727)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | クラウド会計 / クラウド・コンピューティング / 会計教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「デジタル社会に求められる職業会計士の役割・能力と今後の会計教育のあり方」という題名のもと、①先端デジタル技術の影響による環境変化に対して、職業会計士に求められる役割・業務がどのように変化しているかを明らかとすること、また、②その新しい役割や業務を遂行するための能力・スキルがいかなるものであり、どうすればそれらを習得することができるか、という会計教育上の問題について検討を行うことを目的としている。 2022年度は、昨年度同様に職業会計士、企業経営者、財務責任者および地方自治体職員へのインタビューを継続して行い、研究データを蓄積した。具体的に、職業会計士10名、企業経営者8名、財務責任者2名、地方自治体4名の計24名に対して、クラウド会計に対する意識や採用決定に影響を及ぼす要因についてのインタビューを行った。これまで蓄積された質的データの分析結果は、2023年3月に産研論集(関西学院大学)第50号において、「クラウド会計の活用による中小企業会計デジタル・トランスインフォーメイション(DX)のケース・スタディ」という企画論文として5件の論文として出版された。本出版によって、多岐にわたる業種の中小企業および組織を対象としたクラウド会計の研究が行われることとなった。また、クラウド会計を利用した教育問題については、菅原によって”Effect of high school students’ perception of accounting on their acceptance of using cloud accounting”としてAccounting Educationに出版された。今後も継続してデータを蓄積しながら、異なる分析手法を適用しクラウド会計に関する諸問題への検討を深める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先端デジタル技術の導入が会計実務に与える影響要因の分析は、インタビューや先行研究などを用いた演繹的研究のステージ1と、質問票による量的データを統計的手法で分析するステージ2に分けて研究を実施する。ステージ1で明らかとした理論モデルをステージ2の量的データで帰納的に実証する混合アプローチによって結果を導くことを試みるが、2022年度は昨年度に引き続きステージ1の実施を中心として行った。 インタビューおよび先行研究をもとに行われた学会報告として、経営者が遠隔地でクラウド会計を活用する利便性や課題を検討した、内藤による「デジタル技術を活用する中小企業におけるクラウド会計の活用」(中小企業会計学会)、職業会計士へのインタビューをもとに業務内容・役割の変化について検討を行った、加納による「クラウド会計による会計業務の変容-会計専門職へのインタビューに基づく考察-」(国際会計研究学会)、クラウド会計を導入していない企業における導入決定に与える影響要因の特定を試みた、加納による「中小企業におけるクラウド会計導入プロセスの事例研究」(中小企業会計学会)が挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究グループにおけるこれまでのインタビュー調査を通して、企業経営者や職業会計士におけるクラウド会計の導入に関する事例には、多くの示唆が存在していることが分かっている。2023年においては蓄積されたデータをもとに研究がすすめられ、その研究成果として企画論文の出版が行われた。さらに、インタビュー調査を拡張させ、当該内容についてケースブックをまとめるための準備が進められている。 また、クラウド会計に関する先行研究レビューが継続して行われており、論文としてまとめられる予定である。目的は、先端デジタル技術に関するこれまでの課題と知見、行われてきた研究分野、将来の研究のための指針を与える研究ギャップを明らかにすることである。本研究は、これから先端デジタル技術について研究を行う研究者や、企業、会計士・税理士に対して、クラウド会計を中心とした新しいテクノロジーをどのように扱うかの示唆を与える。 今後は、インタビューによって得られたデータからモデルを構築し、当該モデルから帰納的にどの要因がどれだけ先端デジタル技術の会計実務への取り組みに影響を及ぼしているかを統計手法で実証する予定である。これは質問票を使い、量的データを統計的手法で分析する。また、その際には、すでに行われた予備的調査を精査し、より精度の高い質問票調査を行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
2022年度はコロナウィルスの影響で、出張によるインタビュー調査等の一部がオンラインによる開催へ変更されており、当初計画されていた旅費(現地までの交通費と宿泊費)の一部分において、研究費が未執行となり次年度の使用額が生じた。 2023度の使用計画としては、オンラインによって実施した、クラウド会計に対する意識や採用決定に影響を及ぼす要因についてのインタビューを、対面によって再度行うことにより、オンラインによるインタビュー調査では十分に聞き出せなかった内容や、前回のインタビュー内容を踏まえた新たな質問項目によって、精緻な質的データを収集する予定である。また、インタビューによって得られたデータからモデルを構築し、統計手法で実証する予定があり、そのための質問票に関する手続きや分析のためのパソコン等の購入に充てられる予定である。
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