2022 Fiscal Year Research-status Report
Research on Livinghood Mix of Employment, Social Security, and Famil. In case of German Aufstoecker
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21K01833
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田中 洋子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90202176)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 上乗せ支給 / ドイツ / ベーシック・インカム / 基礎保障 / 福祉 / 生活保障 / ジョブセンター |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は大きく三つの研究方法を使って研究を進めた。 第一に、インターネットを通じたドイツ人の上乗せ支給者および支給体験者を対象にして「ドイツにおける上乗せ支給調査」を実行した。3月からアンケート項目の準備とパイロット調査を行い、その後調整を繰り返して7月にはデータを集めることができた。この中で予想以上に多くの人々が支給から抜け出ていること、逆に言うと、支給と不支給の流動性が高いということがわかってきた。分析は現在も継続中である。 第二に、8月にドイツに行き、ヴィッテン市のジョブセンターの所長、チームリーダーおよび専門担当者五名から上乗せ支給者の生活・家族・仕事状況とその問題、ジョブセンターの取り組み方法について個別に聞き取り調査を実施した。また、上乗せ支給対象者本人にアプローチし、本人に対するインタビュー調査を複数人に対して行った。この中では、一方でかなり多様な形で上乗せ支給が行われていることがわかってきた。起業や学生、シングルマザー、外国人や難民など、さまざまな人々がこの制度の対象となっていることである。またそこにおいてスティグマが非常に大きくはなく、むしろ事務手続きの煩雑さが認識されていることがわかった。また、上乗せ支給者も参加するカップバウマルクトという福祉就労施設において、所長へのインタビュー調査を行った。これについては秋の社会政策学おいて、「ドイツにおけるベーシック・セキュリティ制度の実際の運用-セーフティーネットとしての生活+教育訓練支援とその限界」として報告し、フルペーパーとして発表した。今後投稿論文として整えていく予定である。第三に、ドイツ経済社会研究所前所長のハルトムート・ザイフェルト氏とともに、上乗せ支給者の数量分析を行うため、PASSパネルデータを入手し、今後どのような方法で分析を行うかに関して調整中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたアンケート調査が終了したこと、ドイツのジョブセンターでのインタビューおよび受給者へのインタビューが行えたこと、またこれについて学会報告フルペーパーが完成したこと、数量分析の準備が進んでいること、これらの点で研究は順調に進んでいると言える。ただし、渡航途中でコロナに罹患し、またその症状が軽くはなかったため、インタビューをズームに切り換え、本来もっと多くの受給者にインタビューを直接行う予定だったが、それが実現できなくなってしまった。この点については今年度にあらためて行っていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度取り組みたいことは、第一に、昨年度コロナのために実現できなくなったインタビューについてあらためて実施すること、第二に、学会に提出したフルペーパーをブラッシュアップして投稿すること、第三に、アンケート調査の分析を進めること、第四に、数量分析の共同研究を進めていくことである。そのために、ドイツに渡航して調査および研究打ち合わせを進めていきたい。
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Causes of Carryover |
ドイツ渡航中に、コロナ感染の影響で予定していた場所に滞在することができなくなったため、ドイツ国内の交通費などが予定を下回った。またドイツ人研究者との共同研究が昨年度中は前に進まなかったことにより、その分の謝金の支払いが行われなかった。またアンケートの分析のための短期雇用が限定されていた。これらの要因で予算が今年度に繰り越されたため、進めることができなかったドイツ国内の調査や共同研究、アンケート分析を今年度に行っていく予定である。
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