2021 Fiscal Year Research-status Report
社会ネットワーク分析における中心性概念の影響力指標としてのフォーマリゼーション
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21K01841
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
鈴木 努 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (00595291)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会ネットワーク分析 / ソシオメトリー |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は社会ネットワーク分析に関連する近年の内外の文献の収集と日本における社会ネットワーク分析研究に先だつ1950年代以降のソシオメトリー研究に関する文献の収集・調査を行った。近年は統計的ネットワーク分析の研究、応用が進んでおり解説書等の出版も増えてきているため、それらの情報収集を中心に行なった。 社会ネットワーク分析の研究史をふりかえる中で、J.L.モレノのソシオメトリーが1950年代以降、日本の社会学および関連領域で広く受容されながら、その後顧みられなくなったことが明らかになった。ソシオメトリーは、人間関係の計量的な調査、指標化、分析の手法としての独自性からその応用可能性が期待されたが、当時から尺度化における恣意性、統計的検定手法の未発達、マクロな社会理論の欠如などの点から批判されることがあり、競合する他の諸理論、諸手法にとってかわられたと考えられる。 しかし、日本におけるソシオメトリーの応用においては、学級における差別の検出におけるカテゴリ間の結合関係に関する統計的検定手法や、モンテカルロ・シミュレーションを用いたノンパラメトリック検定手法など、現在の社会ネットワーク分析に通じる独自の展開もみせていた。 また、企業組織や地域権力構造などの研究においてはソシオメトリーと社会ネットワーク分析の使用は連続的でもあった。それにもかかわらず、数理社会学の分野においてソシオメトリーと社会ネットワーク分析の関係や連続性が指摘されつつも、その内容については深く検討されてこなかったことについては更にその理由等を検証する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
中心性指標のフォーマリゼーションに関する研究が文献調査にとどまり、独自性のある研究成果を出すことができなかった。一方で、社会ネットワーク分析の研究史をソシオメトリーまで遡ることによって、ネットワーク分析における中心性指標をより広い文脈において捉える視点を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
社会ネットワーク分析の研究史をふまえながら、社会ネットワーク分析における重要な指標のひとつである中心性の諸概念を整理し、相互に関連づけることを可能にするフォーマリゼーションを行う。また、実際にさまざまな社会ネットワークにおいて中心性指標の算出を行うための実践的な方法について検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行により学会がオンライン開催され、出張旅費が不要となった。次年度も同様の状況が続く場合は、オンライン学会への参加費用や物品費として書籍等の購入にあてる。
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