2022 Fiscal Year Research-status Report
社会ネットワーク分析における中心性概念の影響力指標としてのフォーマリゼーション
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21K01841
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
鈴木 努 東北学院大学, 教養学部, 教授 (00595291)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会ネットワーク分析 / 中心性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、社会ネットワーク分析における中心性概念の影響力指標としてのフォーマリゼーションの準備的作業として概念整理と予備的考察を行った。まず、ネットワーク指標としての中心性はネットワークにおける構造的特徴によって定義されるものであり、ネットワーク構造外の何らかのパフォーマンスとは区別されなければならない。それにより中心性とパフォーマンスとの相関を分析することも可能になる。 Borsboomによる心理測定のモデルの類型化を参考に、社会ネットワーク分析においても3つの立場を考えることができる。まず、社会ネットワークを実体的にとらえる立場である。物理的ネットワークと異なり、社会ネットワークを実体としてとらえることは少ないが、電子的情報としてのSNS上の関係ネットワークなどは実体的な社会ネットワークと捉えることができる。次に、潜在的な社会関係や社会構造を想定し、社会ネットワーク分析によってそれらを表現、分析するという立場であり、多くの社会学者はこの立場と考えることができる。最後に社会ネットワーク分析によって関係構造を構築する立場である。これは非関係データから関係データを導出したり、ある関係データから別の関係データを導出するような場合である。 中心性の影響力をネットワーク構造外のパフォーマンスとの間の関連ではなく、ネットワーク構造それ自体に対するものとして考えるとき、ネットワークの形成規則と中心性の関係を考えることができる。例えば、次数の大きいノードに対する優先選択や次数相関などはよく知られている。近年では指数ランダムグラフモデル(ERGM)などの確率的モデルを用いてネットワークの形成がモデル化される。その際、前提として形成規則の一様性が仮定されるが、規則の見られる確率ととらえるのではなく、それに従う頂点対の割合ととらえることで、一様性の仮定をゆるめることが可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
社会ネットワークにおける中心性指標の影響力をモデル化するにあたって、まだ概念的整理にとどまっており、具体的なモデルの構築や実データへの適用が進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
社会ネットワーク分析において中心性指標がどのように影響力指標として用いられてきたのか先行研究を調査するとともに、ネットワーク構造それ自体に対する影響力指標として中心性指標を概念化、モデル化し、実データへの適用を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行の影響などで出張費の支出がなく予定よりも少ない執行額となった。次年度は書籍等の物品費だけでなく出張旅費などとして支出を行う。
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