2023 Fiscal Year Annual Research Report
社会ネットワーク分析における中心性概念の影響力指標としてのフォーマリゼーション
Project/Area Number |
21K01841
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
鈴木 努 東北学院大学, 情報学部, 教授 (00595291)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ネットワーク分析 / 中心性 / ソシオメトリー / ブロックモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度には社会ネットワーク分析の源流のひとつであるソシオメトリーに着目し、日本の学界におけるその受容と衰退について検討した。1950年代には社会学や心理学などの分野において人間関係の調査、分析法として広く紹介され適用されたが、一方で計量的、統計的な面での厳密性の欠如が指摘され、田中熊次郎による独自の統計的手法の開発とその影響を受けた学校現場での応用を除くと、その影響力は小さくなっていった。その後、80年代にグラフ理論や線形代数にもとづく社会ネットワーク分析が再度紹介されることで、日本の社会科学において再度人間関係の計量的分析への注目が高まった。 2022年度には社会ネットワーク分析における認識論的問題に着目した概念整理を行った。参照したのはBorsboomによる心理測定のモデルの類型化である。社会ネットワーク分析において考えられる認識論的立場は、対象の社会ネットワークを実体的にとらえる立場、潜在的な社会構造を社会ネットワークによって表現する立場、そして社会ネットワーク分析によって社会ネットワークが構成されるという立場の3つである。いずれの立場でも、社会ネットワークにおける各頂点の構造上の中心性は構造以外のパフォーマンス等における卓越性とは独立に概念化される。さらに、特定の頂点(群)が中心化されるネットワークの形成過程におけるネットワーク形成の一様性の想定も相対化する必要がある。 2023年度には社会ネットワーク分析における中心性の諸概念がもつ共通の認識論的前提を検討した。頂点のもつ「中心性」は社会ネットワークを形成する何らかの規則の帰結と考えられるが、実際のネットワーク形成規則が一様でないと考えるならば、その帰結を一義的に評価することもできない。替わってネットワークの全体構造における複数のブロックへの帰属の程度を評価することで頂点の構造的地位を評価することを提案する。
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