2022 Fiscal Year Research-status Report
帰還局面における双葉町・大熊町の復興と「共同性」に関する研究
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21K01842
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Research Institution | Tohoku Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
齊藤 綾美 東北文化学園大学, 現代社会学部, 教授 (70431484)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 行真 近畿大学, 総合社会学部, 教授 (60455110)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 原発避難 / 双葉町 / 地域社会 / 大熊町 / 復興祈念公園 / 復興 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は一部住民の帰還がはじまった福島県双葉町と大熊町を事例として、帰還の現状と課題について、「共同性」をキーワードとして地域社会学の立場から実証的に明らかにしようとするものである。2022年度も12月頃までは前年度と同様にコロナ禍の影響を受け、計画どおりに研究が進展しなかった。すなわち、関係者の活動が自粛になったり、ヒアリング対象者のコロナ禍を理由としたヒアリング拒否があったりしたためにヒアリングを自粛せざるをえなかった。というのは、本研究のヒアリング対象者の多くが高齢者であるからである。ただし、ヒアリングができなかった期間には、双葉町・大熊町や「共同性」に関する先行研究の収集と論点の整理を行うことで、研究を進めた。 2023年1月以降、ヒアリングが比較的自由にできるようになったことから、福島県在住の帰還を希望する関係者、帰還を希望しない関係者の双方に調査をし、資料を蓄積し、データを整理する作業を行うことができた。また、双葉町内で震災後にはじめて開催された「だるま市」や神社関係の行事に参与観察することで、震災復興祈念公園の地元自治会関係者や東日本大震災・原子力災害伝承館の語り部にヒアリングすることができた。同時に関係者の協力を得ることで、その他語り部、訴訟団原告、まちづくり団体関係者、町議会議員などにネットワークを広げることができた。 2022年度までに得られたデータを整理し、2023年度にさらにヒアリングを実施することで、内容を精査し、学会報告、論文執筆などを行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの影響で地域住民活動が停滞し、予定していた活動を観察することができなかった。また、ヒアリング対象者の多くが高齢者であるために、調査者と被調査者の双方がヒアリングをためらう事態が発生したからである。ウェブや電話を使ってヒアリングを実施することも試みたものの、対面で得られる情報量に全く及ばないことから、困難ではあるものの可能であればなるべく対面でのヒアリングを試みている。 もっとも、2023年1月頃から対面でのヒアリングが可能になっており、研究を進めるスピードがコロナ禍前の状態にほぼ戻りつつある。 以上のことより研究成果が出ていない状況である。ただし、上述のとおりデータが集まっていることから、2023年度には学会報告、論文等として成果を発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に入り、住民活動を頻繁に観察したりヒアリングをしたりできるようになった。この状態が継続する限り、双葉町等に頻繁に出向き、調査対象者、とくに復興祈念公園や東日本大震災・原子力災害伝承館関係者などを中心として町の復興に関わる「住民」にヒアリングを行う。大熊町の実態把握については遅れているが、部分的に既存研究や行政資料などを収集することで補う。とくに2022年度からヒアリングを行ってきた神社の再建、語り部活動、芸能の復興などをトピックとして、学会報告、論文執筆を積極的に行う。また、ネットワークをより広げ、さらなる情報収集に努める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、計画通りにヒアリングに行かれなかったために、旅費を中心として次年度使用額が生じた。2023年度にヒアリングを積極的に行うことにより、この金額を使用できる見込みである。
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