2021 Fiscal Year Research-status Report
近世都市飛騨高山の人口と家族 ~宗門改帳を史料としたデータベース構築にむけて~
Project/Area Number |
21K01843
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡田 あおい 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (50246005)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 歴史人口学 / 家族史 / 近世都市 / 高山 / 基礎シート(BDS) / 宗門改帳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は、近世都市飛騨高山の歴史人口学と家族社会学の学際的研究を行うことである。歴史人口学は、主に宗門改帳を史料に用いて国勢調査以前の人口を解明する。研究は精力的に進められているが、史料の残存状態からそのほとんどが農村の研究である。 近世都市は研究開始以来注視されつつも、研究は乏しい。本研究が史料とする近世都市高山の宗門改帳は、残存期間が99年間(1773年~1871年)に及ぶ、しかも欠年が一年もない、現在発見されている史料の中では最も情報量の多い最良の史料である。この史料は、1960年代にマイクロフィルム化(全71巻:68914コマ)され、現在麗澤大学人口・家族史研究プロジェクト室に所蔵されている。高山のマイクロフィルムは劣化の恐れがあるため、これを電子化し、紙焼き製本をおこなった。このような準備期間を経て2020年より本格的に基礎シート作成を開始した。この作業を継続し基礎シートを完成させ、データベース化を開始することが本研究期間の目的であり、研究の最終目的はデータベース化された資料をもちいて近世都市飛騨高山の人口と家族の研究を完成させることである。 研究1年目にあたる2021年度は近世都市高山の宗門改帳を改めて観察し、基礎シートには書き込めない情報の扱いを検討し、情報シートを作成した。また、高山との比較を目的として作業を進めている諏訪山間部3か村(北内田村・南熊井村・横内村)のデータベース化を進めた。具体的には、データベースが完成している南熊井村のデータクリーニングと世帯情報の入力作業をおこなうとともに、横内村の基礎シートからデータベースを作成している(現在入力途中の段階である)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
近世都市高山の宗門改帳は、マイクロフィルム全71巻(68914コマ)に及ぶ膨大な史料である。また、宗門改帳は組別に記載されているが、年によりその組名が変更になったり、合併したり変化があり複雑である。そのため、時系列的に基礎シートを作成するのに時間がかかっている。また、高山の宗門改帳には、歴史人口学で用いる基礎シート(BDS)に書き込めない情報が大量に存在する。例えば、一筆ごとに持高の記載があるのだが、その内訳が細かく記載されている。このような基礎シートに書き込めない情報をどのように整理していくかを検討、準備するのに時間を要した。このような検討を強いられたが、その間を利用して諏訪山間部3か村(北内田村・南熊井村・横内村)のデータベース化を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
非常に多くの情報を整理するのに時間を強いられているが、2022年度は、高山の基礎シートの作成を中心に作業を進めていく。作業は、専門知識を持つ研究協力者の援助をうけながら効率的におこないたい。基礎シート作成には多額の経費(主に人件費)と膨大な時間がかかるが、この作業に時間をかけミスのない基礎シートを完成させなければならない。ミスのない基礎シートが完成できなければ、仮に研究が完成したとしても研究自体の意味はなく、信頼性も失われる。作業には膨大な時間がかかり、研究結果を短期間に発表することは困難であるが、壮大な研究の可能性をもつ本研究にとって、この作業は研究の基盤となる最も重要な位置を占めている。禁欲的に慎重に作業を進めたい。また、現時点で完成している基礎シートについては、確認作業を進め、できればデータの入力作業を開始したい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で、全体として計画通りに研究を進められなかったことが最大の理由である。具体的には、調査を中止としたため旅費の使用がなかったこと、研究補助をお願いした方々も思うように作業ができず作業に必要な物品の購入、人件費も計画通りに使用することができなかった。2022年度は、研究補助の人員を増やし、作業の効率化を図り、遅れを取り戻したい。
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