2023 Fiscal Year Annual Research Report
近世都市飛騨高山の人口と家族 ~宗門改帳を史料としたデータベース構築にむけて~
Project/Area Number |
21K01843
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡田 あおい 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (50246005)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 歴史人口学 / 家族史 / 近世都市 / 高山 / 宗門改帳 / 基礎シート(BDS) |
Outline of Annual Research Achievements |
歴史人口学ではそのほとんどが農村の史料をもちいた研究であり、近世都市の研究は乏しい。飛騨高山には安永2(1773)年から明治4(1871)年まで99年間連続する宗門改帳が残存する。この史料をもちいて近世都市飛騨高山の歴史人口学と家族社会学の学際的研究をおこなうことが本研究の最終的な目標である。本年度及び本研究期間の研究成果は、以下の三点である。 一点目は、飛騨国高山二之町村の宗門人別改帳から基礎シート(BDS)を作成したことである。本年度は、文政12(1829)年から慶應4(1868)年までのBDSを作成した。明治2(1869)年から明治4(1871)年までの3年分のBDSは未完成である。作業は継続し完成を目指す。二点目は、安永2(1773)年から寛政12(1800)年までのBDSをデータベース化し、基本的な人口指標と世帯の観察をおこなったことである(観察結果は『哲學』第153集に掲載)。三点目は、文献資料の収集と整理をほぼ完成したことである。 二之町村の宗門人別改帳の特徴は記載内容が豊富であることだ。観察期間の人口は、2回にわたる人口減少期が認められる。特に天明4(1784)年から天明9(1789)年にかけての人口減少は大きい。男女別人口は観察期間を通して男性の方が多いものの較差は小さい。二之町村には女性を必要とする社会構造が存在した可能性がある。世帯数は、観察期間を通して700前後を推移している。居住形態別に観察すると、家持の世帯数は安定的であり、借家の増減が多きい。平均世帯規模は3.7人で、家持の世帯規模の方が大きく、観察期間を通しその差が縮まることはない。二之町村では家持が安定的に屋敷を所有しているわけではなく、質に流したり、また質流れの屋敷を借家住まいの者が所有したり、その入れ替わりも大きい。これこそが二之町村の特徴だと思われるので、この観察も今後の課題としたい。
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