2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study on the News Gathering Process of "Investigative Journalism" - Focusing on Examples of Utilization of the Information Disclosure System
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21K01848
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
小黒 純 同志社大学, 社会学部, 教授 (00388167)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 調査報道 / 情報公開制度 / 取材 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究1年度目として行うべきことは、「情報公開制度を用いた調査報道」が国内で近年、どのように行われてきたのか、どのような報道がなされてきたのか、実態を調査することであった。全国紙などの新聞記事データベースを活用することが出発点となるが、検索機能を用いるとしても、適切なキーワードが存在せず、網羅的に収集するのが難しいという壁に直面することとなった。 そこで、情報公開制度の定着と発展に20年以上取り組んでいる、特定非営利活動法人「情報公開クリアリングハウス」の協力を得ることとした。具体的には、同機関が収集、保存している、新聞記事やウェブサイト上の記事の中から、情報公開制度を活用したことがわかる報道をより抜く作業を丹念に行うことにした。同機関は、全国のジャーナリズム組織によってどのように情報公開制度が活用されているのかを、日頃からウオッチングしているだけでなく、多くの取材記者からさまざまな相談を受け、アドバイスする活動を行っている。同事務所(東京都新宿区)には、膨大な関連資料がファイリングされ、データ化されていることが調査の過程で明らかになった。 具体的には期間を、2017 年 1 月 1 日~2021 年 9 月 30 日 とした上で、「報道機関ないしその記者が情報公開制度を使った結果を使って書かれた記事」を探索した。選り抜く基準として「記事中に『本紙記者』『本紙』など報道機関ないしその記者が情報公開制度を使ったことがわかる記述がある」など4項目を設け、いずれかに該当する記事を、記事内容を閲覧し、手作業で選り抜く作業を続けた。 その結果、新聞記事のコピー(時系列)、選択基準に合致した新聞記事のPDFファイル(年別、時系列)、新聞記事タイトルデータベースとの紐づけなどを作成した。膨大なるものの、非常に整理された形で、網羅的かつ体系的なデータベースを構築できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査内容は前述の通りである。いわば手作業なので数か月を要したが、文字通り研究の基礎となるデータベースを構築することができた。その一方、制度を用いた調査報道を体系化していくために、現場の記者らに詳しい聞き取り調査も複数回行うことができた。こうしたことから、おおむね順調であると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度以降に進めていくべきことは、大きく2つの柱がある。1本目の柱は、2021年度に構築したデータベースに基づき、選り抜かれた報道事例を体系化していく作業である。例えば、①情報公開制度を用いて入手した公文書などから、直ちに新事実を発掘して報道したもの、②行政機関の政策決定過程を、複数の開示文書を元に明らかにして報じたもの、などに分類することができると考えられる。 2本目の柱は、上記のデータベースの中から、特に注目すべき調査報道事例を厳選し、聞き取り調査を行っていくことである。つまり、取材テーマを定めたきっかけ、どのような情報を集める必要があったか、実際にどのような公文書をどのような機関に開示請求したのか、その結果どのような文書がどの程度開示されたのか、そのうち何を活用して報道するに至ったのか、などを明らかにする必要がある。そのためには、調査報道の担い手、つまり当該記者に直接確認するしか方法がない。 2022年度中には、できるだけ多くの調査報道記者に協力を依頼し、協力を得られた方から順に調査を行っていく予定である。既に何人かからは協力の内諾を得ているものの、聞き取り調査と、調査報道に用いた開示文書開示の調査は、かなりの時間を要することが予想される。協力者との日程調整から始まり、聞き取り調査の内容の整理、開示文書の確認など、かなりの時間と手間を要する調査になることが予想される。
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Causes of Carryover |
入手予定だった書籍が品切れのためキャンセルされたため。厳格な予算管理に努めたい。
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