2022 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災からの生活再建期における地域ケア・システムの現状と課題
Project/Area Number |
21K01854
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
永井 彰 東北大学, 文学研究科, 教授 (90207960)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 地域ケア / 地域社会学 / 地域自治 / 地域福祉 / 地域社会再編 / 被災者支援 / 地域生活支援 / 東日本大震災 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生活再建期における東日本大震災被災地の地域社会の現状と課題を、地域ケア・システムの構築(=支援を必要とする人が住み続けられる地域社会の形成)という観点から分析する。本研究では、個々の対象地(基礎自治体)について、現地調査にもとづいた分析をおこなうが、新型コロナ感染症の流行が収束していないため、2022年度までに実施できたことはすでに収集したデータの再検討、県などの後方支援団体やNPOなど中間支援団体への聞き取り、および各種文書資料の収集などに限定された。東日本大震災被災地における地域ケア・システムは、復興事業の実施によるさまざまな制度的・財政的支援を背景とし、そのもとで構築されてきた。復興事業がしだいに縮小するなかで地域ケア・システムの構築をいかにして可能にするかが、被災地での課題となった。文書資料の精査により、これについては、生活支援体制整備事業を活用する形での対応を複数の自治体が採用していることが判明した。たとえば宮城県気仙沼市では、みなし仮設住宅の入居者への戸別訪問などを行ってきた「絆再生事業」の職員を地域支え合い推進員に配置転換した。このような対応は、被災者支援活動を担った人材を継続活用したいという意図が社協側にあること、および自治体が生活支援体制整備事業の委託先を社協に選定したことによって可能とされた。他方、市町村社協以外の団体が地域見守りやコミュニティ支援を継続している事例では、県が実施している支援事業を活用していた。これらの事例では、復興財源が切れたあとの対応が喫緊の課題となっていた。聞き取りを実施した団体では、被災者支援の必要性が失われていないため事業継続を希望していたが、A団体では、厚生労働省の重層的支援体制整備事業の活用を検討しており、B団体では、現行の事業を継続することを県に働きかけているという異なった対応になっていることが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度においては、新型コロナ感染症が収束に向かうと想定し、現地調査を中心とする研究計画を立てていたが、第7波、第8波と感染拡大は継続し、現地調査の実施にさまざまな制約条件が発生した。高齢者の感染防止、保健福祉関係機関の繁忙などのため、対面での現地調査の実施が困難な状況が継続した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度になり、新型コロナ感染症の感染が一定の落ち着きをみせてきた。保健福祉機関の繁忙という制約条件は変わらずこれら機関の協力を得ることは難しいが、NPOなどの地域支援組織・団体、自治会・町内会などの住民自治組織は、感染対策をしながら活動を通常の形に戻そうとするようになってきた。こうした諸組織・諸団体の協力を得ながら、現地調査を実施することとする。
|
Causes of Carryover |
2022年度においても新型コロナ感染症の感染が継続したため、予定していた現地調査の実施が困難になり、旅費およびそれに付随する経費(調査に必要な物品の購入や現地での資料購入の経費および資料整理のための人件費)の支出が減少した。2023年度においては、新型コロナ感染症の感染は継続が見込まれるものの、NPOなどの地域支援組織・団体、自治会・町内会などの住民自治組織は、感染対策をしながら活動を通常の形に戻そうとするようになってきた。こうした諸組織・諸団体の協力を得ながら、現地調査を実施する。また調査結果とこれまで収集した資料とを合わせて、分析を行う。
|