2021 Fiscal Year Research-status Report
中期Habermasの社会学理論におけるデモクラシー思想の解明
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21K01866
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
飯島 祐介 東海大学, 文化社会学部, 准教授 (60548014)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ハーバーマス / デモクラシー思想 / 学生運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
ユルゲン・ハーバーマスの「コミュニケイション論的転回」は、(a)1960年代後半の学生運動と(b)70年代後半の「ドイツの秋」とに対してそれぞれ構成された、デモクラシー思想上のいかなる課題に対する、いかなる応答であったのか、本研究はこれを核心的「問い」として設定している。 2021年度はとくに上記(a)に焦点を合わせて、次のことを明らかにした。①すでに正教授となっていたハーバーマスは、学生運動には当事者ではなく伴走者として関与したこと。また、その際、大学改革の要求に、またそのなかでもとくに「大学の民主化」に照準したこと。②こうした関与は、『公共性の構造転換』および『理論と実践』での提案を実践する試みであったこと。すなわち、「大学民主化」に照準したことは、組織内部の公共性への参加(共同決定)――『公共性の構造転換』で公共性再生に向けて提案された方策――を実践する試みであった。また、伴走者として関与したことは、理論による実践の唱導(理論啓蒙)――『理論と実践』で暴力を抑止するために提案された方策――を実践する試みであった。③こうした試みを通して、共同決定および理論啓蒙の立場の限界が明らかになったこと。④この限界に直面して「コミュニケイション論的転回」へと繋がる、次の思想的課題が構成されたこと。公共性再生の可能性を参加(共同決定)に求めることができないとしたら、どこに求めることができるか。また、実践が暴力への転化を抑止する可能性を理論に求めることができないとしたら、何に求めることができるか。 2021年度は、以上の成果を最終的に公開するところまでは至っていない。まず、2022年度の早い段階で、学会発表で公開することを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は当初、次の課題を設定した。(a)1964年にハイデルベルク大学哲学員外教授からフランクフルト大学の哲学・社会学正教授に転じたハーバーマスは、折しも盛んになっていた学生運動に本格的に直面する。この運動からハーバーマスがどのような思想的課題を構成したかを、『抗議運動と大学改革』(1969年)等から再構成するという課題。同時に、(b)ハーバーマスの助手でもあったオスカー・ネクトの批判等を参照しながら、同時代の思想状況を再構成し、そのなかでのハーバーマスの思想的課題の特色を浮き彫りにするという課題。 以上の課題のうち、(a)についてはほぼ終了しており、成果を公表することが可能な段階に達している。しかし、(b)については十分な成果をあげるにいたっていない。進捗が遅れた主な理由は、ドイツでの資料収集や閲覧を新型コロナウィルス感染症の流行のために断念したことである。当初からドイツへの渡航が難しいことを予期していたが、必要な資料の収集に予想以上に時間を要した。結果として、資料の読解と分析に回す時間を十分にとることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
必要となる資料の収集と読解は進んでいる。ドイツでの資料の収集・閲覧が可能であればそれが望ましいが、不可能であったとしても、これまでの作業を継続的に進めることで、成果として公表することが可能な段階には達すると考える。
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Causes of Carryover |
当初予定していたドイツでの資料収集・閲覧が新型コロナウィルス感染症の流行により断念したために、次年度使用額が生じた。2022年度に同感染症の状況が改善した場合には、ドイツでの資料収集・閲覧を行う予定であり、その旅費に充当する予定である。
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