2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Work and Care Work by Female Immigrants with Degrees of Higher Education
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21K01879
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
賽漢卓娜 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (20601313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田 ゲン お茶の水女子大学, 学生・キャリア支援センター, アソシエイトフェロー (10849061)
大野 恵理 神奈川大学, 法学部, 非常勤講師 (40820022)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 移民女性 / ライフコース / 高学歴 / 中国人 / ケアワーク / ワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
第1に、研究対象者である1960、70、80年代高学歴中国系移民女性、および非標準的ライフコースを送る女性のケアワークとワークに関する先行研究を確認し、年に2回開催した研究会で意見交換によって、研究対象の「結婚移民」の範疇について、日本人との婚姻関係継続中のみならず、日本人と離婚後など婚姻の実態の伴わない女性も「結婚移民」に含むことに合意した。また、比較の対象として、新たに1990年代生まれの中国系高学歴女性も研究対象に入れることに合意した。 第2に、初歩的な調査を経て、本科研の研究会そして国内外の学会において、発表を試みた。1つ目は、高学歴中国人移民女性の育児をめぐるトランスナショナルな世代間関係の構築である。夫婦とも中国人である共働き世帯と夫中心就労世帯への考察を通して、夫の多忙さやホスト社会の育児資源の貧弱さを背景に、母国の親族ネットワークに大きく依存していることが分かった。子育て期において、両系の祖父母の頻繁の来日および母国帰り出産・育児がなされている。また、フルタイム妻の「職業の禁欲」とパートタイム妻の「キャリアの断続」が問題になっている。2つめは、シングルマザー中国人女性のケアワーク-子育てネットワークに関してである。ひとり親中国人女性は不安定でリスクの高い「ブルーカラー化」とパートタイム労働しか選択肢がないなか、子育てでは役所や民間団体のキーパーソンとのつながり、親業の補完になっていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年2月まで、コロナの状況下において、予備調査および初歩的な分析を計画通りにすすめていたが、研究の理論的なベースの構築は十分とは言えない。 2021年度にコロナによる移動制限で新潟を中止し、中国北京での調査や研究者との交流は、 北京への移動をしたものの、計画した調査は中止せざるを得ず、中国の研究者との間に意見交換を行うことで研究を進めた。 共同研究者の内1名が研究拠点を海外に移すため共同研究者から外れるため、研究体制の若干の修正が求められている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの今後の影響は不透明であり、2022年度中の国内/海外渡航が確実に実施できるかどうかは現状で判断できない。2022年度中に国内外への移動が困難な場合は、渡航の代わりとして、現地の関係者と事前に協議したうえでオンラインによるインタビューや研究打ち合わせ等を実施する。
また、研究の理論的なベースの共有を今年度に構築する。先行研究ほか参考文献、方法論に関する文献等の共有も視野に、日本における移民女性のワーク(キャリア・就労)とケアワーク(家事・育児・介護)の現状、これに関する学術的・政策的動向について議論し、かつ、各自の研究経験にもとづく調査を設計し、本格的な調査に移る体制などを整える。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大による移動制限や共同研究者の1名が海外への拠点移動のために、次年度での使用をすることになった。コロナの状況を見つつ、調査を実施する予定である。 第1に、2021年度では、研究の理論的なベースの構築は十分とは言えない。そのため、2022年度において、研究代表者の賽漢卓娜、大野恵理中心に関連文献の収集およびデータ分析方法の入手に諸費用がかかる。また、中国の家族・ジェンダー研究者との間にさらなる意見交換を行うための謝礼の支出がある見込みである。第2に、新型コロナの状況を見つつ、調査を実施する予定である。2022年度に、関東・中部・九州で1960、70、80年代生まれの移民女性の調査と、予定である関東・中部で非標準的なライフコースを送る移民女性の調査を行う。新型コロナ感染拡大による調査の実施が困難の場合は、オンライン調査に切り替えて研究を継続する。オンライン研究集会を利用して移民女性のワークとケアワークをめぐる世代間・階層間の比較研究を行う。上記の諸々な調査にかかる諸費用は生じる予定である。
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