2023 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の幸福感に関連する地域環境要因:集合的効力感に着目したマルチレベル分析
Project/Area Number |
21K01885
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
原田 謙 実践女子大学, 人間社会学部, 教授 (40405999)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高齢者 / 幸福感 / 地域環境 / 集合的効力感 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、都市社会学と社会老年学の理論的/方法論的系譜に沿って、日本における高齢者の地域環境と主観的幸福感の関連を検討することを目的とした。2023年度は、2022年度に50~79歳の男女を対象として実施し、1,324人から回答を得たインターネット調査(中高年者の地域生活に関する全国調査)の分析を進めた。 分析の結果、「今回の新型コロナウイルス感染症の影響を受け、現在の暮らしについて、より重要と意識するようになったこと」について、7割以上の中高年者が「健康や体調の管理」を挙げていた。そして「家族のつながり」「知人・友人とのつながり」「地域社会とのつながり」という回答が続いた。さらに本調査で、中高年者の孤独感を性別・婚姻状況別にみると、一度も結婚したことがない未婚者の孤独感が男女ともに高かった。また離別者の孤独感も既婚者に比べて高く、ライフコース上で蓄積されてきた有利・不利が中高年者の孤独感に関連している可能性が示唆された。さらに孤独感の地域差についてみると、女性では差異はなく、東京23区や政令市といった大都市に居住している男性で孤独感が高いことが明らかになった。本年度は、以上のような調査結果をまとめたリーフレットを作成し、研究成果を公表した。 研究期間全体を通じたレビューから、感染拡大から高齢者を守る保護的な対応は、その意図せざる結果として「高齢者は無力である/重荷である」といったエイジズムを強化した可能性があり、アメリカでは若年者がコロナ禍における不満を高齢者に向けた世代間関係の分断も注目された。さらにコロナ禍は、ステイホームという掛け声によって外出制限がかかったため、人びとに身近な近隣環境の重要性を再認識させた。国内外の研究でも、集合的効力感(近隣への信頼と期待)が高い地域に住んでいるシニアほど幸福感が高いことを示唆していた。
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