2021 Fiscal Year Research-status Report
初期キャリアにおける職業的地位および労働条件と労働観の双方向的な作用の解明
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21K01889
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
田靡 裕祐 愛知大学, 文学部, 准教授 (80619065)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 圭三 摂南大学, 経営学部, 准教授 (20612360)
米田 幸弘 和光大学, 現代人間学部, 准教授 (40555257)
吉岡 洋介 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (90733775)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | キャリア / 職業的地位 / 仕事の質 / 仕事の価値 / 労働倫理 / 職務満足感 / パネル調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,職業的地位および労働条件と労働観の双方向的な因果関係について,初期キャリアの段階にある若い働き手を対象としたパネル調査を実施し,定量的に明らかにすることである.働き手の職業的地位や労働条件は,その後の労働観をどのように規定するのか.また反対に,労働観はその後の職業的地位や労働条件をどのように規定するのかといった問いに対して,計量社会学的にアプローチする. 本年度はまず,調査票を設計するための準備として,国内外の既存研究や類似の先行調査をレビューした.キャリアの客観的な側面である職業的地位や労働条件については,社会階層論や労働社会学,仕事の質(job quality)研究を中心に整理した.キャリアの主観的な側面である労働観については,仕事の価値(work values)研究に加えて,労働倫理や職務満足感についての既存研究を整理した.さらに,東大社研パネル調査やSSM(社会階層と社会移動)調査,WVS(世界価値観調査)やISSP(International Social Survey Programme)の調査票について検討した. 以上の検討結果をふまえ,調査票を設計し,所属機関の倫理審査を経て,第1回目の調査を実施した.本研究の調査は,調査会社がプールしている標本に対するインターネット・パネル調査である.調査時点で20~39歳の非学生かつ有職の男女個人を調査対象とし,2017年の就業構造基本調査の集計を参照して,性別(男性/女性),年齢層(20代/30代),学歴(大学卒/非大学卒)によって回収目標数の割付を行った.実査は2月21日から24日にかけて実施され,1,469ケースの有効回答を得た.得られたデータについて,サティスファイス(回答努力の最小限化)が疑われるケースのチェックや単純集計の確認を行い,職業や産業変数のアフター・コーディングは次年度の着手とした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,既存研究や先行調査のレビューをふまえて調査票を設計し,パネル調査の第1回を実施した.当初は,研究期間内で可能な限り長期にわたった(各回の間隔を長くとった)パネル調査を計画していたが,対面での綿密な研究会議が実施できなかったこと等により,スケジュールがやや後ろ倒しとなってしまった.また,実査が年度末に近い2月の実施となったことで,職業や産業変数のアフター・コーディングの作業を,年度末に完了させることができなかった.加えて,現時点ではまだパネル・データではないため,学会報告や学術論文による成果の公表もできなかった.とはいえ,調査票を十分に吟味したうえで第1回の調査を実施できたため,本研究は現時点においておおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画のとおり,パネル調査の第2・3回を令和4年度に実施し,第4回を最終年度である令和5年度に実施する.パネル調査であるため,原則としては同一設計の調査票を,全ての回で使用するが,第1回調査で得たデータを確認して,必要に応じて質問項目の削除や追加(たとえば,時間によって変化しない,出身階層についての質問項目など)を行う.また,第2回以降は,ケースの脱落(第1回の回答者が,第2回以降の調査から外れること)が問題となる.脱落がランダムに生じていれば良いが,それが特定のライフイベントや失業,転職,転勤などと関連していると,本研究にとって深刻な問題となる.第2回調査で得られるデータを綿密に吟味して,必要であればケースの補充を行う.さらに,第2回調査が完了した時点で,パネル・データとしての分析(同一個人の変化の分析)が可能となるため,本研究課題のリサーチ・クエスチョンの解明に向けた予備的な分析を開始し,その結果を学会報告や学術論文の形で公表する.
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により学会がオンラインでの開催となったり,研究分担者との対面での研究会議の開催を見送ったりしたことで出張旅費の支出ができなかったことに加えて,パネル調査の委託費用が想定よりやや低かったことにより,次年度使用額が発生した.この未使用の予算については,パネル調査のケースの脱落を補うための追加調査に充当する.
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