食農コミュニケーションの現状と課題：支配的表象と語りづらさの社会学

2023 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 21K01897
• Research Institution: Tohoku University
• Principal Investigator: 徳川 直人 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (10227572)
• Project Period (FY): 2021-04-01 – 2024-03-31
• Keywords: コミュニケーション / 食農コミュニケーション / 支配的表象 / 相互行為

Outline of Annual Research Achievements

「食農間のディスコミュニケーションとそのパターン」について、出版用の草稿を完成させることができた。
第一に、種々の資料分析・事例分析から、「支配的な農業・農村表象」についてとりだした。すなわち「ロマンティックな食農表象」「自動農業の夢」「烙印としてのムラ」「フードファクトリーの悪夢」という4類型である。これら複数の表象は「競合・葛藤」するとともに場合により恣意的に「相互補完」しあう関係にもあり、それゆえこれらの表象の使用にも固有の動学と政治が発生する。ここに生じる意図せざる地位強制やラベリングなどが語りづらさの経験に影響していることを明らかにした。また、農家の語りにも「議論的でレトリカルな」性質を生じさせていると分析できた。
第二に、「支配的な消費者像」についても、安価で便利なものを追求する「功利主義的・大衆的消費者像」、社会的配慮をおこない消費者運動に参加する「公衆的消費者像」、自己の指向性に準拠した文化的消費にコンサマトリーな充足を感じる「分衆的消費者像」、さらに差異を追求する「卓越追求型消費者像」を設定した。
第三に、これらの表象の作用について、資料やインタビュー結果の再解釈をおこなうとともに、これらの組み合わせにより、どのようなすれちがい（コミュニケーションのハザード）が生じているかのパターンを描き出すことができた。このパターンは、食と農のコミュニケーションを図ろうとするときのハザードマップとして活用しうるであろう。
今後、書物としての出版という形で、研究成果の公開をはかってゆく計画である。