2021 Fiscal Year Research-status Report
Disfluency as deviance from and a resource for interaction order
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21K01898
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高木 智世 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (00361296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
串田 秀也 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70214947)
林 誠 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (70791979)
黒嶋 智美 玉川大学, ELFセンター, 助教 (50714002)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 会話分析 / フィラー / 非流暢性 / 相互行為資源 / 日本語 / 吃音 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日常会話をはじめとする社会的相互行為に見られる非流暢的現象を会話分析という社会学的手法を用いて探求することを目的としている。相互行為における非流暢性は、「滑らかに」相互行為を進めることが参加者に強く志向されているという点において「逸脱」ではあるが、他方では、デリケートな事象を話題にしたりデリケートな行為を遂行したりするときに利用されうる相互行為の「資源」でもある。本研究では、非流暢性のこうした両義的性質を焦点として、非流暢性の「逸脱性」と「資源としての利用可能性」が実際のさまざまな相互行為場面においてどのように立ち現れているかを精査し、非流暢性が果たす役割を実証的に解明することを目指している。2021年度は、まずは、大学院生の補助を得て現有の日常会話のデータを整理し、トランスクリプトの精緻化・事例の収集を進めた。その上で、日常会話・診療場面におけるフィラー的形式「まあ」「なんか」および「こう」が使用される相互行為的環境の析出と、これらの形式の使用によって達成される相互行為的働きについて分析を進めた。その成果の一部を公開するため、6月に開催された国際語用論学会においてパネルを企画して研究代表者・分担者全員が発表した。また、他言語におけるフィラー類の分析をしている海外研究者もパネルに参加してもらうことにより、本研究テーマについて国際的な学術交流を実現した。その後、この学会発表を踏まえて、特に「まあ」及び「こう」についての分析深め、その成果を国内外の学会誌・学術誌において論文を発表するに至った。 また、吃音者の相互行為における非流暢性の分析も本研究の重要な柱の一つであるが、吃音者の相互行為場面のデータ収集について、研究代表者所属大学の研究倫理委員会に承認を得ることができたため、現在データ収録の協力者を募り、(現有データに加えて)新たにデータを収集する準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、2021年度後半より吃音者の相互行為場面のデータを新規に収集し、データの整理・分析を進めることを予定していたが、コロナ禍により、新規データの収集が滞った。また、分析を深める上で不可欠な共同的データセッションを年度内に2回オンラインで実施したが、診療場面や吃音者の相互行為場面の録画データについてはオンラインで共有することができないため、この点について大きな制約があった。それ以外の点については、年度内に2件の学術論文掲載に至ったことを踏まえると、進捗は順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、吃音者の相互行為の新規データ収集・整理と分析に注力したい。また、2023年度に開催される国際会話分析学会(ICCA)において実施予定のパネル発表(研究代表者・分担者全員登壇予定)に向けて準備を進める。このパネルでは、2021年度の国際語用論学会での発表内容に比べより多様な非流暢性現象(吃音者の相互行為における現象を含む)に着目し、その相互行為資源としての本質に迫るものを目指す。コロナ感染状況を踏まえつつ、可能であれば、対面によるデータセッションやシンポジウムも実施する。
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Causes of Carryover |
2021年度は、コロナ感染状況に収束が見られず、スイスで開催予定であった国際学会がオンライン開催となり、また、対面でのデータ検討会の開催も見合わせたため、旅費の使用が皆無であった。2022年度は、感染状況が改善すれば、オンサイトでの国内学会発表・データ検討会を予定している。
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Research Products
(8 results)