2022 Fiscal Year Research-status Report
アジアの家族と村落コミュニティの比較歴史社会学:日本とインドネシアを中心に
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21K01910
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
永野 由紀子 専修大学, 人間科学部, 教授 (30237549)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | インドネシア / バリ島 / 社会学 / 家族 / 村落 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究の中間年として、日本とインドネシア・バリ島の家族と農村コミュニティに関する統計資料や文献の収集を継続すると同時に、日本の農村の現地調査を実施し、以下のことが明らかにされた。 1.バリ島の村落について (1)バリ・ヒンドゥーの身近で重要な近隣集団は、村(デサ)と部落(バンジャール)である。村と部落は、行政と慣習の二元性をもつ。(2)慣習村と慣習部落の機能は、(ⅰ)農業生産組織(水利組合)の機能から区別され、(ⅱ)地方行政機構の末端組織である行政村や行政部落の機能からも区別されて、(ⅲ)慣習的・宗教的・文化的機能に特化している。(3)近年は、慣習部落の相互扶助は葬送儀礼に限られ、それ以外の通過儀礼は家族や近親者だけが準備作業をする。(4)村内に居住し、日常的に奉仕活動に参加できる活動的メンバーよりも、村外居住の非活動的メンバーのほうが今日では多い。村外メンバーは、すべての行事に参加することは難しいが、村外に持ち家があり、親が村内に住んでいない場合でも、大きな祭礼や儀礼の際には帰省し、メンバーとしての義務を履行していた。(5)バリ・ヒンドゥー村落のコミュニティの紐帯として、農業生産的機能や行政的機能よりも、葬送儀礼の相互扶助の機能が重要であることが明らかになった。 2.日本の村落について (1)水田単作地帯の集落のなかで農家は今日では少数である。(2)集落営農組織や大規模経営の個別農家が、非農家の土地を受託して経営している。(3)農事組合法人の構成員は、農業雇用労働者というより農家であり、この意味で集落営農組織は企業的な農業団体というより農家連合・集落連合である。(4)農村の非農家も、農地を所有する元農家であり、都市の混住地帯とは異なる。(5)非農家が多数を占め、農業生産的な相互扶助の機能がほぼ喪失している今日の農村コミュニティをどのようにとらえるかが、今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的に関する文献研究や資料収集・資料の整理と分析は、研究計画どおり進展している。現地調査については、コロナの感染拡大が終息したとはいえない状況下で、現地での聞き取り調査や資料・情報収集を十分に進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
日本とバリ島の農村の家族とコミュニティについての文献・資料の収集と分析を進めると同時に、コロナによる移動や行動の規制が解消される本年度は、日本の農村調査を中心に現地でのヒアリング調査や資料・情報収集を実施する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍での移動と行動制限が継続していたので十分な現地調査がおこなえなず、旅費が想定よりも抑えられたので次年度使用額が生じた。移動と行動制限がなくなる次年度以降の現地調査の旅費として使用したい。
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Research Products
(1 results)