2021 Fiscal Year Research-status Report
歴史的転換期における「労働-生活」空間の編成と組織民族誌に関する国際比較分析
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21K01912
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
田中 研之輔 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (30513204)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会的排除 / 「労働ー生活」空間の構成 / 社会学的実証研究 / キャリア / 国際比較研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代都市再開発期における社会周縁層の空間的滞留と社会的排除に関する国際比較研究を 進めていくために、本研究では、1)社会政策過程分析――新自由主義国家の社会福祉政策と空 間隔離の施策、2)都市空間 分析、3)労働・生活世界分析―先端事例分析法 の三つの分析を進めてきた。 簡潔に述べるなら、本研究で は1政策過程と国家論に関する国家・社会政策分析、2(都市)社会-空間分析、3都市周縁層の 労働生活世界を抽出する質的調査メソッド。本研究では、先端事例分析法を相互に連関させるなかで総合的な分析を行っている。 特に、重点的には、組織エスノグラフィーの精査に取り組んできた。組織エスノグラフィーの 研究手法にすえ、都市に生起する様々な社 会集団や組織を対象に、継続的な調査から分析を行なってきた。これらの国内での組織エスノグラフィーと海外でのエスノグラフィーがいかなる関係にあるのかを分析してきた。これまでエスノグラフィーは、単一組織や集団 の分析に用いられる傾向にあった。本年度、分析してきた先端事例分析法(Extended Case Method)では、 複数組織や集団の組織エスノグラフィーが可能となる認識論的枠組みが可能となる 。組織エスノグラフィーを専門とする世界的研究者も現在、この先端事例分析法(Extended Case Method)に取り組んでいる。さらに、本年度は、コロナパンデミックによる歴史的転換期をむかえた現代都市社会を対象に、組織民族 誌的アプローチを用いた(国際)比較分析から、「労働-生活」空間 の編成・再編成と<社会-空間の動態的関係>を明らかにする分析フレームの検討を進めてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、コロナパンデミックによる歴史的転換期をむかえた現代都市社会を対象に、組織民族 誌的アプローチを用いた(国際)比較分析から、「労働-生活」空間 の編成・再編成と<社会-空間の動態的関係>を明らかにすることを目的とし、その手法として国際比較アプローチを用いる。しかし、コロナパンデミックで国際調査を実施できていない。当初、 本研究は、1国内の労働現場の空間・組織編成に関する研究と、2米国とアジア諸国での労働 現場のフィールド調査を実施し、分析結果を著作 として発表していくことを研究計画に据えていた。さらに、その上で3国内・海 外のそれぞれの事例をこれまで申請者が21年間にわたり継続的に行ってきた『「労働-生活」空間 の 国際比較都市社会学』をまとめる集大成の3年間として位置づけてきた。具体的な調査方法論とし て本研究では、国際比較研究の手法として注 目されている最先端の先端事例分析法を用いる。コロナパンデミックの回復とともに、海外調査に取り組み、研究計画の遅れを取り戻していく。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、第一に、コロナパンデミックによる歴史的変化に対峙する現代社会において、構造的変化や社会的インパクトが、いかなる「労働 -生活」の編成と再編成を創出しているかについて分 析を進めていく。第二に、都市労働層の生活空間を対象に、社会-空間の動態的関係の過 程分析を展開する。そして、第三に、本研究で取り組む組織エスノグラフィーの国際比較分析を実施する。 *PCと関連機器は、年度始めに購 入し、研究環境を整える。 本研究では、現代都市再開発期における「労働-生活」空間の構成と、社会的排除の施策を強 化する社会動向について、フィールドデータと最 新の理論的視座とを対話させ、国際比較の視点を 導入して緻密な社会学的実証分析を展開していく。 本研究は、ピエール・ブルデューが警鐘を鳴らしている新自由主義国家がもたらす「生活の破壊」 の内在的分析かつ国際比較分析として、独 創性を持っている。また、本研究は、1~2年といった短 期間での研究期間では、充実した内在的な国際比較分析を実施することは難しい。「労 働-生活」空間の編成・ 再編成と<社会-空間の動態的関係>について組織民族誌(Organizational Ethnography)を用いた 先端的な国際比較研究 として学内外で注目される研究成果をまとめていく 具体的には、1国家・社会政策分析に関して、新自由主義体制下の社会周縁層への諸施策の分 析を加えていく。これらの国内での組織エスノグラフィーと海外でのエスノグラフィー がいか なる関係にあるのかを分析していくことである。これまでエスノグラフィーは、単一組織や集団 の分析に用いられる傾向にあった。国内ではまだ、 先端事例分析法(Extended Case Method)を用いた研究成果はない。 本研究は、複数年かけて国内初の研究成果に向けて取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
コロナパンデミックにより、国外研究調査が実施できなかったため。その旅費分を次年度へと繰り越すことになった。コロナ情勢を的確に判断しながら、研究計画にある海外調査を実施する。海外調査に関連する旅費が主な使用となる。
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Research Products
(3 results)