2021 Fiscal Year Research-status Report
子どもの能動性の社会学的再考:教育・福祉・まちづくりの言説史と事例研究から
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21K01913
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
元森 絵里子 明治学院大学, 社会学部, 教授 (60549137)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 子どもの権利 / エイジェンシー / 能動性 / 社会化 / 系譜学 / 統治性 / 歴史社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)子どもの能動性・社会参加の言説史の整理:教育学・教育社会学や児童文化論を中心とした言説史の整理を行い、「子ども理解の現代的課題」と題した論考にまとめ、2022年度夏に公表される予定である。また、同着想は、本研究課題とは別の科研費プロジェクトの成果として企画された『多様な子どもの近代』の終章で、急遽現代に引き付けた考察を行うこととなった際、および、緊急依頼のあった『世界』のコロナ禍と子どもの特集にも反映されている。 2)事例・地域研究:対象地域に、当初の子どもの権利論等および福祉に関連して重要と予定していた川崎市、京都市、高知市に、解放教育からの子どもの権利論を考えるうえで欠かせないと判断された大阪市を加えることとし、1970年代から現代にかけての解放教育および権利論の系譜の資料収集に着手した。ただし、2021年度は、長期休暇にかかる形で緊急事態宣言期間が長く、宿泊を伴ったまとまった調査が設定できず、文献調査および最小限の聞き取り調査にとどまった。川崎・京都・大阪調査の成果の一部は、本研究課題以前から取り組んでいた分析と併せて、解放教育と多文化共生論の観点から、勤務校の紀要にまとめて報告した。 3)理論的・方法論的検討:英国の子ども社会学の泰斗うち、アクターネット理論などを参照するA.Proutと、系譜学や統治性論を重視するD.Oswellのアプローチの検討を進めたほか、それを含めた1970年代以降の家族の変容について考えた共著書籍の論文を出版準備中である。また、I.Hackingの理論枠組みを参照して子どもカテゴリーの変化について考える枠組みの検討を行い、現代の子ども観について具体的な考察に応用する方策を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
緊急事態宣言期間が長く、フィールドワークはおろか、文献探索のための出張すらも十全に行えなかったこと、学内役職の仕事が多く、エフォートが予定よりも捻出できなかったことにより、新資料の入手という1年目の最重要課題はやや遅れている。その分、研究期間後半に予定していた理論的な検討は進み、本研究着手以前から持っている資料と新入手資料の分析に応用するような論考は十分に公表できている。そのため、相殺して総じて「おおむね順調」といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、コロナ禍も改善されると思われるため、出張をともなう文献調査および地域の関係者への聞き取りなどを行いたい。
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Causes of Carryover |
2021年度は緊急事態宣言期間が長く、また、それが大学の長期休暇中と重なったため、予定していた資料収集のための出張調査すらままならない事態となってしまった。情報収集のための参加を予定していた学会もオンライン開催となった。その分、出張なしでできる資料の収集や整理作業、理論的な検討作業に注力したため、執行が不十分となった。その分の調査出張を2年目以降に行いたい。
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