2021 Fiscal Year Research-status Report
「社会の中で生きる非触法ペドファイル」の実証的研究:当事者のナラティヴに注目して
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21K01915
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
湯川 やよい 愛知大学, 文学部, 准教授 (20723365)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ペドファイル / クィア / セクシュアリティ / ジェンダー / ナラティブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、非触法ぺドファイル(子どもを性的な対象とする小児性愛者のうち、性加害を実行したことがない人々)の実態を読み解く仮説生成型の研究である。非触法ぺドファイルが、自身を社会の中でどのように位置づけているのかを、当事者自身のナラティヴ(語り)を主軸として明らかにする。また、近年その実態解明が喫緊の課題とされながら、研究蓄積が極めて薄い非触法ぺドファイルに焦点化することで、子どもの安全を企図する諸政策を展望する議論の基盤を提供するねらいもある。
2021年度は、(1)先行する予備調査(挑戦的研究の一部)に基づき、男性当事者のセクシュアル・アイデンティティ形成について、特に、海外当事者言説との相違に焦点化しての聞き取りに着手した。(2)また、国内女性当事者(1名)よりアクセスがあり、ラポール形成ができた。(2)のデータをいかにアウトプットすべきは、国内外で先行事例がほとんどなく、社会的にも複雑な文脈を考慮する必要があるため慎重な検討を要するが、ひとまず初年度の成果として当該データを取得できたことは重要な成果と考える。 (3)ケース間の比較結果を今後理論検討とつなげるための方法論的基盤についても、検討を進めた(※(3)については関連する他の助成研究にもかかわる成果である)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は年度前半に当初計画していた対象者(非正規雇用の男性当事者)と連絡が取れなくなるなど部分的に困難が生じたものの(理由はコロナ関連とそれ以外の複合的要因)、年度後半(10月)に非常にアクセスが難しいとされる女性当事者への新規調査が成功し、半年をかけて一定のラポールが築けた。また、方法論の理論的検討についても、関連する助成プロジェクトとの相乗効果により、一定の成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、2021年度の最大の成果は、国際的にみても極めて蓄積の浅い女性当事者へのインテンシブな聞き取り調査に成功したことにある。そのため、来年度はこのケースへの比重を増やし、男性当事者のみを前提とした仮説生成だけでなく、多様なインフォーマントの事例検討にかんするアウトプットも目指したい。
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Causes of Carryover |
第1に、昨年度後半に新規インフォーマント(上記女性インフォーマント)とのアクセスが成功したことから、理論検討の方向および今後の聞き取り計画に変更が生じたことが主な理由である。 第2に、上記と関連して分析のための資料検討(比較の視点)を見直し、新たなリストのもと次年度の論文購入等が必要となったことも理由である。
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Research Products
(1 results)