2021 Fiscal Year Research-status Report
庇護主義を超えて―ポストコロナ時代のリスク意識に関する国際比較研究
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21K01924
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
高橋 征仁 山口大学, 人文学部, 教授 (60260676)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 庇護主義 / リスク / 責任の分散 / 新型コロナ感染症 / ワクチン接種 / 国際比較調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、災害や感染症などに関して、専門家や行政に大きく依存する庇護主義(パターナリズム)の脆弱性を明確にするとともに、市民のリテラシーやレジリエンス向上の必要性や有効性を実証的に明らかにする点にある。まず2021年度の研究においては、2021年2月に実施した調査データをもとに、ワクチン接種に関する意向について、イスラエルと日本、ハンガリーの3ヶ国の比較分析を行った。 それぞれの国におけるワクチン接種率は大きく異なっていたものの、これら3ヶ国で共通にみられたワクチン接種意向の心理学的要因は、「政府に対する信頼」と「ワクチンを接種しなかった場合の後悔」であった。逆に、感染や重症化への不安を示す「感染しやすさの知覚」や「重症化しやすさの知覚」、感染経験や既往症リスクは、どの国でもワクチン接種意向と有意な関連が見られなかった。 日本での特徴としては、副反応やそれに伴う休業など「ワクチン接種の弊害」によるワクチン接種の忌避傾向が比較的強くみられた。また、家族や友人からの接種推奨などによる主観的規範が強いほど、学歴が高いほど、ワクチン接種意向を示す傾向が見られた。 また、ワクチン接種をめぐる迷信は、それぞれの国で大きく異なり、日本で特徴的だったのは、「ワクチンを接種すると新型コロナに感染したことになる」という生ワクチンとmRNAワクチンを混同した迷信であった。こうしたワクチンの迷信は、イスラエルにおいては、ワクチン忌避傾向と関連していたものの、日本とポーランドにおいては、統計的に有意な関連は見出されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
科研費の取得に先行して調査計画・データ収集を実施していたため、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
各国の庇護主義的政策をどのように特定し、計量化するのかが課題である。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症のため、旅費や謝金の使用ができなかった。また、山口大学の中期計画の決算のため、経費利用申請の締め切りが11月となり、web調査の予定が次年度にずれ込んでしまった。
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