2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of a program for preventing the emergence of abused children having potential violence
Project/Area Number |
21K01943
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
廣澤 愛子 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 教授 (10345936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲月 聡子 岡山大学, 社会文化科学学域, 准教授 (50839892)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 被虐待児 / 潜在的暴力性 / 予防治療プログラム / 創造的芸術療法 / 児童福祉施設職員 / 入所児童の暴力への対応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,被暴力経験のある子どもが有する潜在的暴力性に焦点を当て,大人になって暴力性の問題が顕在化する前に,暴力性を緩和・解消する予防治療プログラムを開発することである。 昨年度は,児童養護施設及び児童自立支援施設の専門職員への面接調査から明らかとなった,1)施設入所児童の暴力の特徴・タイプ,2)施設専門職員の暴力への対応パターン,3)子どもの暴力の特徴に合わせた効果的な対応・支援の方法の3点について,アメリカ心理学会にて報告し,今年度,より推敲したものを,再度アメリカ心理学会で報告する予定であるとともに,現在,国際学会に論文を投稿中である。 加えて,児童心理治療施設及び児童自立支援施設の入所児童に対して,潜在的な暴力性を緩和するための予防治療プログラムを開発するべく,その短期プログラム(児童心理治療施設では4回連続のプログラム,児童自立支援施設では5回連続のプログラム)を試行した。この短期プログラムは,遊びに基づいた心身をほぐすワーク,イメージを用いた自己表現活動,マインドフルネス瞑想に基づいた心身を整えるワークの3つの要素から構成されており,これらのワークや表現活動を通して,1)子どもが潜在的な暴力性を安全に放出すること,2)イメージを介した自己表現活動を通して,子ども自身が自らの感情や考えに改めて気づき,自覚すること,3)表現活動を他の児童と共に行うことで,相互交流によって自己表出が適度に促されれること,の3点が確認された。また施設職員が,このプログラムを協働して実施することを通して子どもの新たな側面に気付き,子どもに対するアセスメントの深まり・広がりが確認された。 この試行プログラムの実践内容や効果についても,第30回子どもの虐待防止学会(in 香川)にて報告予定であり,現在,論文も執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
施設入所児童が有する潜在的暴力性の特徴について,児童自立支援施設,児童心理治療施設,児童養護施設など,施設によって子どもが有する潜在的暴力性の質に違いが見られることが,施設職員への面接調査から明らかとなった。 施設によって子どもの有する発達的課題・心理的課題が異なり,また,各施設で目指す養育方針も異なる。それぞれの施設の特徴,方針,子どもの実態に応じた予防治療プログラムを開発することが,潜在的な暴力性の問題を緩和・解消するにあたっても極めて重要である。 そこで,その相違性を踏まえた予防治療プログラムを開発するべく,試行プログラムの構成を組み立て直し,各施設の特徴を踏まえた試行プログラムを複数開発した。その後,複数の施設でこれらの予防治療プログラムを行い,プログラム終了後には,その評価を行った。これら一連の過程に想定よりも多くの時間を要することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在開発した,潜在的暴力性を緩和・解消するための予防治療プログラム短縮版(4回シリーズと5回シリーズ)の効果検証を踏まえて,全8回の正式な予防治療プログラムを開発することが,今後の課題である。 すでに,全8回(2か月)の予防治療プログラムの構成について検討を進めており,児童自立支援施設をはじめとした児童福祉施設において,実施予定である。プログラムの効果検証については,プログラム実施前後における評価尺度の変化,描画の変化,さらにプログラム実施期間を通しての子どもの言動の変化,表現物の変容過程,に基づいて行う予定である。 研究成果の公表については,来年度3月に開催される国内学会で発表することを目標としている。
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Causes of Carryover |
対面で実施予定であったプログラム実施後の振り返りや研究に関する打ち合わせを,ほぼオンラインで実施することとなったため,次年度使用額が生じた。 但し,来年度は,今年度よりも頻度高く,複数個所でプログラムを実施予定であり,それに伴う旅費も見込まれる。したがって,次年度使用額についても,来年度の研究活動で十分消化できると考えている。
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