2021 Fiscal Year Research-status Report
日本版FITTプログラム(家庭訪問療育モデル)の効果測定および開発をめぐる研究
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21K01963
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
諏訪 利明 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 准教授 (70633840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芳我 ちより 香川大学, 医学部, 教授 (30432157)
小田桐 早苗 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (10461245)
黒田 美保 帝京大学, 文学部, 教授 (10536212)
下田 茜 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (20412257)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 家庭訪問型療育 / FITTプログラム / TEACCH Autism Program / 早期療育 / BOSCC |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、通常の自閉スペクトラム症(以下ASD)の療育プログラムに、アメリカ、ノースカロライナ州TEACCH Autism Programで実施されているFITTプログラム(家庭訪問型の療育プログラム)を取り入れることによる発達効果の検証、および日本版FITTプログラムというべき家庭訪問療育を組み合わせた新しい療育モデルの開発を目的としている。 2021年度は、1年目にあたり、療育効果を測定するための尺度として、BOSCC(Brief Observation of Social Communication Changes)を取り上げ、BOSCC開発に至る予備的研究調査論文を抄読し、研究チーム内で、その内容を共有してきた。BOSCCは、自閉症診断のスタンダードツールとして実施されるADOS-2(自閉症診断観察検査 第2版)とも関連があり、測定する項目には、自閉症診断に欠かせない視点が含まれている。BOSCCは、従来の効果測定の尺度と比較して、段階を細かなレベルに分けることで、ASDの社会的コミュニケーションの発達の変化を把握しやすい特徴をもっている。療育効果を測定する上では、非常に重要なツールであると考えられる。 FITTプログラムについては、TEACCH Autism Programのホームページ内に専用ページがあり、開始時の具体的内容を把握することができる。またFITTプログラムの開発者の一人であるカラ・ヒューム(ノースカロライナ大学教育学部准教授)氏との情報交換の中で、最近のFITTプログラムにおける適用論文についても紹介され、チーム内で抄読した。日本における家庭訪問型療育については、ペアレントトレーニングや訪問看護の形の中で実施されているものが多くみられたが、FITTプログラムのように、親子の遊びを実際に家庭の中で家族にコーチングすることについての研究は見当たらない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、研究者チーム間でZoomによるWeb会議を3回開催し、チーム内での役割分担の確認や全体の計画についての話し合いを進めてきた。研究テーマに関することとしては、評価尺度として使用する予定であるBOSCCや、実際の研修テーマになるFITTプログラムについての論文抄読を進めるとともに、日本における家庭訪問型療育についての過去論文検索もほぼ終了し、研究背景の論文化に向けての材料を整えることができた。 FITTプログラムについては、家庭訪問型療育であるという特徴に加えて、早期療育、および家族に対するコーチングの二つの視点が重要であるということがわかってきた。早期療育の方法であるESDM(アーリースタートデンバーモデル)の影響を受けており、FITTプログラムの実施にあたっては、ESDMの習得が必要と考えられ、ESDMの学習も開始した。研究チームメンバーと共にESDMの初級講座を受講し、以降、ESDMの実践についての学習会を継続的に実施している。またさらにESDMアドバンス講座も受講し、現在、ESDM認定セラピストとしての資格取得も目指す方向で進んでいる。 またコーチングについては、TEACCHのコーチングマニュアル、またその背景となったThe National Professional Development Center on Autism Spectrum Disorders(ASD公立職能開発センター)発行のGuidance &Coaching on Evidence-based Practices for Learners with Autism Spectrum Disordersを翻訳する勉強会を立ち上げて、内容理解に努めてきた。FITTプログラムについてより深い知識を習得する機会を継続的に実施し、2年目の計画に向けて着々と準備を整えてきた1年間だったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目として、FITTプログラムの担い手を育てるための研修実施に向けた研修プログラムの整備および実施が主な目的となる。 既にFITTマニュアルについては翻訳が進んでおり、2022年度前半には完成となる予定である。マニュアルが完成次第、アメリカ、ノースカロライナ州のTEACCH Autism Programのホームページ上のFITT関連ページを参考にしながら、ESDMおよびコーチングマニュアルからも参考にしながら、研修プログラムを整備し、FITTプログラム研修を実施していく予定である。 研修の対象者としては、研究チームの関連のある事業所等を中心に、関心のある保健師、療育事業所指導員、児童発達センター指導員らに紹介する形で募集していく予定である。また実際に担い手として実施を要請するにあたっては、研修終了後の継続的なフォローアップの必要性もみえてきており、研修やフォローアップの回数なども含め、研修計画の概要をさらに具体的に作成していく予定である。計画を立てる際に、本来、対面で研修を実施する計画ではあったが、コロナの状況によっては、Webでの研修も視野に入れて計画を作成する必要があると考えられる。対面とは違うWeb研修の在り方については、2021年度に実施されたTEACCHのファンダメンタルトレーニング(研究者受講済み)を参考にして、Zoom機能を駆使した研修計画を立てる予定である。 あわせて前年度からの療育効果を測定するためのBOSCC研究については、研究チームメンバー(黒田)から現在の研究の進捗についてさらに具体的な情報提供を受け、共有していく予定である。またこの1年で進めてきた論文抄読の結果をまとめ、論文化に向けての準備も少しずつ進めていく予定である。そのためにも研究会議の頻度を隔月1回程度に引き上げて、一層の情報共有を進めていこうと考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度はコロナの影響があり、1年目の計画である評価尺度のBOSCCについて具体的に学ぶためのワークショップ等は開催されず、論文抄読で終了したため、使用しなかった。その分が繰り越されたために金額が多くなっている。 2022年度は、FITTプログラムの研修の実施に向けて、テキスト代金や研修備品等に使用されることになると計画している。
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