2021 Fiscal Year Research-status Report
発達障害者家族の「親亡き後」の支援体制の構築に関する研究
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21K01965
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Research Institution | Seinan Jo Gakuin University |
Principal Investigator |
通山 久仁子 西南女学院大学, 保健福祉学部, 講師 (60389492)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 発達障害者家族 / 親亡き後 / 当事者組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、予定していた「障害当事者」組織へのインタビュー調査を、新型コロナウイルス感染拡大の影響により実施することができなかった。そのため先行研究のレビューを通して、発達障害者家族の「親亡き後」に関する研究動向を整理した上で、生活課題・生活支援ニーズに関する調査研究実施に向けた枠組みの検討を行った。 レビューの結果、発達障害者家族に関しては、障害当事者および親を対象とした「親亡き後」の課題やニーズに関する調査研究が行われておらず、知的障害者家族を対象として多く見られた、「親亡き後」の課題の背景を検討するような研究も行われていなかった。また、地域生活を支えるための専門職の連携やサポートネットワークの必要性が指摘されているものの、発達障害者の特徴として、障害福祉サービスや相談に結びつきづらい側面があることが明らかとなっていた。したがって、これまで障害当事者に活用されてきた障害福祉サービスや成年後見制度が、発達障害者の場合においても有効であるのかの検討、精神障害者やひきこもりを対象とした見守り体制、発達障害者に対して実践されている「スキル・トレーニング」などの適用可能性を検討していく必要がある。これらの支援は「基礎的な生活の維持」のための支援として位置づけられるが、こうした支援に加え、「生活の質を向上させる、楽しみや趣味、自己実現の場とそこへ結びつける支援」(若井隆弘ら 2018)の具体的な内容を検討していくことが必要である。さらに障害当事者のみならず、親やきょうだいを含む家族への支援体制を構築していく必要性があり、「ペアレントプログラム」や「ライフプラン」などの検討が求められることが明らかとなった。 またこうした支援において、当事者同士の関わりの重要性が指摘されており、「親亡き後」の支援体制において当事者組織が一定の役割を果たす可能性が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度当初、発達障害者家族の「親亡き後」の生活課題・生活支援ニーズを検討するため、「障害当事者」組織へのインタビュー調査を予定していた。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、感染拡大地域にある「障害当事者」組織へのインタビュー調査を実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、2021年度に実施することができなかった、①発達障害者家族の「親亡き後」の生活課題・生活支援ニーズの検討、②「当事者」組織における「親亡き後」の支援体制に関する現状と課題の分析について、当事者と親の双方の視点から明らかにすることを課題とする。またこの研究結果に基づき、2023年度に実施予定のアンケート調査の調査項目の検討を行う。 まず①について、2021年度の先行研究のレビューにもとづき検討した枠組み、障害当事者への「基礎的な生活の維持」のための支援と、「生活の質の向上・自己実現」のための支援、それに加え、親やきょうだいを含む家族への支援に分け、発達障害者家族における生活課題・生活支援ニーズについて明らかにする。研究方法としては、「障害当事者」と「親当事者」の組織のリーダーおよび主な会員を対象としてインタビュー調査を行う。 次に②について、上記の「障害当事者」および「親当事者」の「当事者」組織のリーダーを対象として、「親亡き後」の支援体制構築に向けた現状と課題についてインタビュー調査を実施する。そして現在、ピアサポートや居場所づくりの活動が主流となっている「当事者」組織の活動が「親亡き後」も継続して有効な支援となり得るのか、ニーズに応じてどのような支援を今後創り出していく必要があるのか、またそれを支える組織の、地域資源としての持続可能性について検討する。 なおインタビュー調査にあたっては、今年度と同様、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されるため、状況によってオンラインでのインタビュー調査等の方法を検討する。 さらにこれらの調査結果をもとに、上記団体の会員に対するアンケート調査実施のための質問紙について検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当初予定していた、感染拡大地域にある当事者団体へのインタビュー調査を実施することができなかった。そのため今年度は文献による研究をすすめた。これにより調査・研究旅費および調査謝金等に差額が生じた。 次年度は感染状況をみながら、今年度実施できなかったインタビュー調査を実施する。
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