2021 Fiscal Year Research-status Report
対人支援における熟議アプローチの実践・評価手法の開発
Project/Area Number |
21K01966
|
Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
松繁 卓哉 国立保健医療科学院, その他部局等, 上席主任研究官 (70558460)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 澄惠 (吉田澄恵) 東京医療保健大学, 看護学部, 教授 (10279630)
牛山 美穂 大妻女子大学, 人間関係学部, 准教授 (30434236)
孫 大輔 鳥取大学, 医学部, 講師 (40637039)
畠山 洋輔 東邦大学, 医学部, 助教 (80830182)
本林 響子 お茶の水女子大学, グローバルリーダーシップ研究所, 准教授 (40772661)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 熟議 / 対人支援 / ケア / コミュニケーション / 納得 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、政治における合意形成や科学コミュニケーションなどの領域で用いられてきた熟議(deliberation)のアプローチを、保健・医療・福祉の対人支援の実践の中で活用していけるよう、その基本的性格を学ぶためのプログラムの開発に着手した。2021年度は、保健・医療・福祉ほか対人支援の専門職従事者とその支援対象者を対象とする「研究会」の形式で上記のプログラムを共に学ぶ場の準備作業に従事した。この研究会における学びのプロセスを観察・記録し、これらデータの分析を通して、対人支援における熟議アプローチの理論と実践手法を構築する。 本研究は、熟議アプローチに関する先行研究のレビューから着手し、その基本的性格を整理するとともに、これらを「合意形成」の方向性としてではなく「対人支援」の実践に資するような内容へと修正するための検討を行った。途中経過は、2021年5月の第47回日本保健医療社会学会大会において「Round Table Discussion「納得」「熟議」「共感」―対人支援のキーコンセプトを考える―「問題解決」「意思決定」を前提としないケアの構想―」と題し、成果発表した。 また、2021年5月、7月、2022年1月、3月に研究班会議を実施し、検討内容を確認・協議し、プログラム開催の準備作業を完成させた。今後は「研究会」を通して、知見を収集・蓄積・分析し、その後、学習したことを教育現場で伝授していけるよう教育プログラムとして構築する。一連の作業を通じて、対人支援現場の相互理解に重点を置くアプローチを開発する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画において、2021年度から2022年度にかけては、対人支援に応用する熟議アプローチの基本的性格を固めることを目標とした。2021年度は、概ね順調にこの課題を推し進めることが出来た。具体的には、従来、政治等の合意形成や意思決定を目的として実施されてきた熟議アプローチに見られた「問題解決」や「合意形成」といった性質を緩和し、参加者個々の考えの整理の場/見解の多様さを知る場としての性質を重視する内容に改変を試みた。プログラムでは、次の構成(各ステージの設定・ステージ名のネーミング)を組み立て、さしあたり、保健・医療・福祉の従事者らの参加を募り、プログラムを実施することとなった。 1.「オープニング・ステージ」:各回、熟議のテーマを設定。 2.「議論ステージ(1)“袋から出してくる”ステージ 」:テーマについて、自分の心の中にある考えを言葉にしてみる。 3.「議論ステージ(2)“ながめる/さわる”ステージ 」:熟議の特長である「意見の背景要因(なぜそのような見方が形成されたのか)」に視点を向ける。 4.「発見(今日得たこと)を “並べる” ステージ」:参加者から示された多様な考えについて、無理に整理・体系化するのではなく、一通り振り返る中で各自の発見(特に自身の考えに関する新たな視点)を得ることに主眼を置く。
|
Strategy for Future Research Activity |
対人支援に従事する人々とその支援対象者の間の相互理解を促進するための方途として、熟議のアプローチを開発する本研究では、真に臨床実践を豊かにするために、熟議アプローチの適切な評価を行うことが重要であると位置づけている。さらに、この評価を適切に行うためには、従来の医療コミュニケーションで重視されてきた「問題解決」や「意思決定」とは異なる方向で、独自の評価指標を考えることが必要となる。この作業においては、健康に関するダイアローグを専門とする研究分担者の孫や、診療ガイドラインの作成における患者参加について業績を有する研究分担者の畠山を中心に、既存の対人支援に関する評価方法の批判的検討が可能となる。 また、本研究では、熟議アプローチの実践手法を進めることのできる人材を育成するための教育プログラムの開発も計画の一環として含めているが、この作業については、看護教育に携わる研究分担者吉田および医学教育に従事する研究分担者孫らを中心に作業を進めていくなど、研究遂行のために体制を整えている。
|
Causes of Carryover |
令和3年度は、熟議アプローチについて、既存の方法論のレビューと、対人支援実践への活用を念頭に置いた改変に関する検討作業が中心となっていたが、新型コロナウイルスの感染拡大の状況下で、協働作業は全てリモート機器を使用した形態で行われた。このため、当初積み上げていた予算の執行には至らなかったが、上述のとおり、当初の研究計画は概ね順調に遂行できている。
|
Research Products
(2 results)