2022 Fiscal Year Research-status Report
Presentation of the significance and issues of contract type out-of-facility work and solutions to the issues
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21K01975
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
影山 摩子弥 横浜市立大学, 国際教養学部(都市学系), 教授 (80214279)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 障がい者雇用 / 施設外就労 / 心理的安全性 / シナジー効果 / 人間関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究テーマは、障がい者の就労が企業内の心理的安全性を高め、健常者社員の労働生産性を改善するという仮説を検証するとともに、雇用される障がい者と施設外就労で企業に出向く障がい者とでは、心理的安全性創出効果に違いがあるかを検証するものである。具体的方法としては、施設外就労を受け入れの有無に基づいて労働生産性を比較するのではなく、雇用された、もしくは、施設外就労の障がい者が職場にいるかどうか、そして、その障がい者とどの程度の接触をしているかに基づいて、心理的安全性の変化を確認する手法をとった。 研究計画では、昨年度に調査の方針と具体的調査項目を確定し、調査に着手するとともに、今年度は、必要なデータをとり、分析を進める予定としていた。そこで、今年度も昨年度に引き続き、企業にアンケートへの協力を依頼するとともに、その回収、および、回収したデータの分析を行った。協力の呼びかけは、これまでの研究や講演・セミナーで面識のある企業に直接声をかけるとともに、セミナー会場で主催者が許容する場合協力を呼び掛けたり、企業団体の勉強会に参加して協力を呼び掛ける方法を通して行った。また、企業団体のメールマガジンを通して呼びかけをしてもらった。このような形で昨年度から今年度にかけて直接に協力の依頼を行った企業は、200社ほどとなる。また、企業団体内のメールマガジンで障がい者関連の企業に呼びかけてもらった数は、300社ほどであった。施設外就労を受け入れている企業が多くないことから協力を申し出てくれた企業はそのうち42社であったが、就労継続支援A型事業所なども含まれていたため、最終的に調査を依頼した企業は、昨年度分を含めると27社となった。アンケート結果を入力後、研究計画通り、分析を行った。 分析結果は本調査の中間報告という意味合いを持たせ論文にまとめた。本論文は、査読も通ったため、現在、印刷中となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
施設外就労という特殊な要因がかかわっているため、協力を依頼した企業数に比して協力申し出企業数は目立って多いとは言えないものの、施設外就労の実施状況(受入れ状況)からすれば、一定の対象は確保できたものと考える。また、回収できたデータを基に分析を行った結果、一定の成果は得られた。具体的に言えば、障がい者と接触がある場合、心理的安全性が高まることが明らかとなった。また、その際、施設外就労の障がい者が与える影響は限定的であることが明らかとなった。 具体的に、成果について解説すれば、心理的安全性が改善する要因として設定した倫理性(倫理的と思われる行動様式やふるまい)、他者との協力志向、配慮の雰囲気が、障がい者と接触した場合に改善すること、それによって職場の心理的安全性が高まることが明らかとなり、当研究に当たって設定した仮説が検証された。 また、施設外就労の障がい者の場合、心理的安全性に影響を与えないわけではないもののそれがわずかであり、健常者の労働生産性を改善する効果が限定的であることについては、施設外就労の障がい者が健常者社員と同じフロアで作業をしていたとしても、障がい者に同行した支援員が間に入るため直接の接触を得にくいことに加え、施設外就労の場合、ラインを丸々請け負う形態をとるため、健常者の社員が施設外就労の障がい者と同じラインで一緒に作業をすることがないことが原因である可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、分析で導き出した結論に齟齬がないか企業の人事担当者や障がい者対応の責任者・現場担当者、就労支援施設の職員にインタビューを継続して行う。特に、施設外就労については慎重にヒアリングを実施する予定である。 本研究では、障がい者が職場の心理的安全性を高め、健常者社員の労働生産性(業務パフォーマンス)を改善すること、その際、施設外就労の障がい者も多少なりとも影響を与える可能性があることを仮説として設定し、その検証を課題として設定した。昨年度と今年度に回収した企業の従業員に対するアンケートに基づき、障がい者の存在が心理的安全性を高める効果を持つことが明らかになった。しかし、これまでの研究で、健常者の障がい者との接触の深さが障がい者に対する評価を高める方に変え、健常者の労働生産性(業務パフォーマンス)改善につながることが分かっているため、施設外就労については、効果が限定的であるという仮説のもとに研究を進め、その仮説が検証された。その点からいえば、施設外就労が企業にとって持つ意味は大きくないように見える。しかし、施設外就労は企業にとって、他の業務に比して正社員の労働力を割くほどの収益性がなかったり、人員を増やしてまでラインを動かしたりするほどではない場合でも、柔軟にラインを稼働させたりできるため、事業戦略上有効である。しかも、障がいの多様性という点から、働き方の多様性が必要で、それに対応する就労形態の1つと考えれば、企業にとっても障碍者にとっても選択しとして存在すべきともいえる。障がい者にとっての意味という観点は重要であり、それについて就労支援組織にインタビューを企図する。その際、雇用が進みにくい精神障がい者にとっての意味が特に重要と思われる。それは、企業にとってはグレーゾーン対応のノウハウを形成するという意味も持つ。そこで本研究を補完するため、インタビューを継続して実施する。
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Causes of Carryover |
旅費が足りなくなったため、前倒し請求をしたが、10万円単位であったため必要額を超えることになった。必要額ぴったり請求できるのであれば、次年度使用額は生じなかった。なお、今年度初頭に予定していたインタビューが、インタビュイーの都合で2か月早まったため実施したことから旅費が必要となったもので、予定が若干早まっただけで、研究には全く影響を与えない。むしろ予定どおりの実施を強行していた場合、実施できなかったので、研究に支障が出ることとなった。今後は予定通り、インタニュー調査等を継続するので、次年度使用額はすぐに消化できる。
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Research Products
(1 results)