2021 Fiscal Year Research-status Report
認知症が進んできた段階における終末期ケアと意思決定支援
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21K01984
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
篠田 道子 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (00319302)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 終末期ケア / 認知症 / 意思決定支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021(令和3)年度の研究目的は、認知症終末期における意思決定を支援するツール・スキル・マネジメント・教材の開発・試行・評価である。認知症の症状が進んだ段階での意思決定支援は、本人の意思が推定されにくく、どのように学習すれば育成されるのかを明らかにすることである。そのためアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を活用した意思決定支援の取り組みについて、インタビュー調査を計画した。さらに、意思決定支援に早くから取り組んでいるフランス・イタリアの現状と課題を整理し、国際比較をすることである。 日仏伊それぞれにおいて文献調査とインタビュー調査を実施した。結果は以下の通りである。①ACPには光と影があり、認知症の進んだ段階で活用することは慎重さが求められる、②フランス・イタリアはACPの概念が普及しておらず、事前指示書による意思決定支援を政府が推奨するも、個人の自由を重んじる文化のため、ほとんど普及しておらず、多職種によるカンファレンスを選択していた。③コロナ禍のため、コミュニケーションが制限されるとともに、オンラインカンファレンスへの方法の変更も余儀なくされた。オンライン化を導入している施設と遅れている施設の二極化が明らかになった。④高齢者施設では介護職員の夜間対応の不安が大きく、医療職からの相談・助言体制が不安を軽減していた。 多職種で支える意思決定支援の教材を2ケース作成した。作成したケース教材は、多職種が参加するディスカッションで使用し、多方面から意見交換を行い、その後ブラッシュアップした。次年度以降は作成したケース教材をもとに、多職種連携教育に着手したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査期間である2021(令和3)年8月~2022(令和4)年2月は、日仏伊ともにコロナ禍にあり、高齢者施設や医療機関は対応に追われてしまい、オンラインインタビューの実施に時間を要した。また、本研究の目的であるACPを活用した意思決定支援は、コミュニケーションを媒体に展開されるため、コロナ禍でコミュニケーションの変更が余儀なくされたり、多職種カンファレンスが縮小されるなどの理由で予定通りに進めることができなかった。特に高齢者施設や認知症グループホームなど小規模施設は、ICT化が遅れていること、第6波(2022年1月~2月)で施設内クラスターが多発したため、研究を縮小・中断せざるを得なかった。 意思決定を支援するツール・教育プログラムと教材の開発・試行・評価については、対面でのプログラムを前提にしていたため、教材開発のみにとどまり、試行までには至らなかった。オンラインでの開催については、コロナ対策による多忙を理由に次年度以降に実施して欲しいとの意向があった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022(令和4)年度も新型コロナウイルス感染症の収束は望めないが、オンラインによるインタビュー調査と質問紙調査を推進したい。2022年の研究目的は、①2021年度に作成したケース教材を使って、多職種で支える意思決定支援の育成を試み、評価する、②死亡前30日間の症状マネジメントと医療行為、意思決定支援の関連を明らかにすることである。 ①②ともに質問紙調査を実施するも、定量的な数字から伺い知ることができない語りをナラティブなインタビューで実施する。 質問紙調査の項目は、国内外の文献とインタビュー調査で作成した項目を使用し、インターネットによる質問紙調査を実施する。調査対象は、認知症の症状が進んでいる高齢者施設・認知症グループホームを予定している。調査は大規模調査に定評があるリサーチ会社またはシンクタンクの協力を得る。さらに、リサーチ会社またはシンクタンクの海外調査の専門スタッフが子会社のパネル(現地の特徴や習慣等を踏まえている)を使用して実施するグローバルなインターネットリサーチを複数の国と地域で同時に行うことも検討している。 意思決定支援のプログラムと教材開発・試行・評価については、感染予防対策を講じたうえで、対面での試行・評価を検討したい。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症が収束しなかったため、直接現地に赴いての調査ができなかったこと、参加者を入れての公開研究会ができず、すべてオンライン開催になるなど旅費や会場費等の経費が未使用となった。 2022(令和4)年度の新型コロナウイルス感染症の状況は見通せないので、インターネットを活用した質問紙調査やオンラインインタビューを増やすなど、有効に活用したい。
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Research Products
(2 results)