2022 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Personal Recovery of Human Service Professionals Who Are Involved in Communication Disorders
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21K01988
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Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
工藤 芳幸 関西福祉科学大学, 保健医療学部, 講師 (90747049)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 対人援助職 / パーソナルリカバリー / 当事者性 / コミュニケーション障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
医療・福祉におけるコミュニケーションの発達援助には発達検査等で平均的な能力との差異を見る個体能力論的評価軸がある。これに一定の有用性を認める一方で、こうした見方は当事者に「特権集団(Goodman、2019)」から周縁化された〈障害〉のストーリーを構造的に強いる可能性がある。本研究では音声言語や社会的コミュニケーションに関する障害の当事者性を有する対人援助職、特に言語聴覚士(ST)の体験を元にこの課題について検討する。これまでの研究で、ADHD特性があるSTのライフヒストリーの語りにおいては周囲の人間の「当たり前の」コミュニケーションにおける規範そのものが1つの障壁だったこと、そのために常に抑圧的にならざるを得なかったことが示唆された(工藤、2021)。また。吃音があるSTの語りから、SCATによる分析過程で見えてきたことは「配慮の前提としてのカミングアウト」である。非当事者は発話でコミュニケーションをする上での特権性を持っており自身の発話について「説明」する必要はないが、吃音者には特に配慮においてその説明が求められるのである。また<ずれているのはマイノリティである自分>かも知れない、という<自分に対する確信の持てなさ>を抱えていることが見えてきた。これまでの研究過程で、特権集団の中にあっての<障害>の当事者はスティグマの隠蔽(Goffman, 1963)という戦略を取っている可能性があり、それが更なる<障害>となっている可能性が示唆された。 本研究では引き続き、インタビュー法を用いて「援助者」としての文脈と「当事者」としての文脈の2つの視点を生きるSTに焦点を当て、コミュニケーションにおける〈障害〉の生成と構造的な問題、一旦内面化された〈障害〉の脱学習過程をパーソナル・リカバリー論を援用し、考察していく。現在、構音障害当事者のSTへのインタビューデータを分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では2022年度に実施を見込んでいたインタビューを先行し、2021年度に2名当事者である言語聴覚士(ADHDがある方と吃音がある方、1名ずつ)にインタビューを実施した。しかし、その後COVID-19の感染状況が収束せず、対面でのインタビューを組みにくい状況にあった。一部はオンラインインタビューに変更して実施した。2022年度は3人目の協力者にもインタビューを実施することができたが、分析には時間を要している。協力者は個人的な交友関係の中で依頼していることもあり、各種学会や研修会も軒並みオンラインやオンデマンド開催だったことも影響し協力者を選ぶことには苦慮している。現在までインタビューを実施した3名のデータは、SCAT(Steps for Coding and Theorization;大谷, 2008)などの質的研究法を用いて分析を進めている。逐語録や分析の結果を研究協力者と共有し、それを元にした追加インタビューを行って考察を行っていることもあり、1名のデータを分析し終えるまでには予想よりも時間がかかっている状況である。 当初の計画の文献研究については、インタビュー実施を前倒しで実施しているため現在も継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度実施の3人目のインタビューについて、引き続き分析を進め、これまでと同様に協力者と共同での考察を行っていく。さらに1、2名の研究協力者へのインタビューを追加する予定である。2021年度、2022年度は学会発表を中心に成果を報告してきたが、2023年度は論文化を進める予定である。論文化に当たっては、分析の手法についても改めて検討し、より視覚的に全体像を捉えやすい形式での図式化を検討している。
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Causes of Carryover |
2021年度に参加を予定していた学会がオンラインで開催される等、当初の予定よりも旅費がかからないことから、累計の費用が抑制されていることが理由である。2022年度は学会発表にかかる旅費を支出した。研究を加速するためにインタビューデータの文字起こしについては専用のアプリケーションを使用することとし、その費用の捻出や整文作業の依頼、論文化の際の英文アブストラクトのチェックについても使用の予定がある。
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Research Products
(1 results)