2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of the training model for social workers to practice phenomenological research
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21K01989
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
植田 嘉好子 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 准教授 (40612974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 彰吾 東海大学, 文化社会学部, 教授 (40408018)
村井 尚子 京都女子大学, 発達教育学部, 教授 (90411454)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ソーシャルワーク / 現象学的研究 / 研修モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
日本では現象学によるソーシャルワーク研究がごく僅かであるため、海外文献を中心に現象学の役割を検証した原著論文が『社会福祉学』(日本社会福祉学会)にて掲載された(2023年5月)。現象学はクライエントの危機的な経験に対する実存的な理解に加え,家族や他職種など異なる価値を持つ人々との相互理解や合意形成の方法を探究し,ソーシャルワークの専門性を現実経験から本質的に解明する役割を果たしていると考察された。 この研究結果を元に、2023年7月の日本ソーシャルワーク学会では、近接する心理学,教育学,看護学の領域との比較、並びに哲学としての現象学のキー概念によるソーシャルワーク実践の構造化を試みた(口頭発表)。 2023年8月には、第40回国際人間科学研究会議にてシンポジウムを企画・実施した。 “Working with Disadvantaged and Marginalized People: Phenomenological Practices in Social Work and Healthcare(社会的不利な立場にある周縁の人々との協働:ソーシャルワークとヘルスケアにおける現象学的実践)”をテーマに、イギリス・サルフォード大学のバネッサ・ヒースリップ教授、大阪大学の村上靖彦教授と川崎医療福祉大学の植田嘉好子が登壇した。社会的に孤立した人々への支援の在り方や、彼らの存在を社会にどのように認めさせていくか等、現象学的な観点の重要性やその応用の仕方に関して活発な議論が行われた。 またヒースリップ教授からは本研究課題に対する研究指導をいただき、現場のソーシャルワーカーに求められる現象学的研究とは何か、どのような事例を用いて教授していくか、基本的概念をわかりやすく伝える工夫について助言が得られ、研修モデルの構築に大いに役立った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度より本課題を開始したため、コロナ禍の影響で現地調査が大幅に遅れ、研究計画が全体的に後ろ倒しになっている。現場のソーシャルワーカーに実践経験の聞き取りを行った上で、現象学的研究の対象となる事例やテーマについて絞り込む必要があった。海外文献の調査研究で明らかになった現象学的研究の主題や役割も参照しながら、日本における研修モデルの構築に向けて、具体的な教授の方法やステップを教育的に組み立てていく段階にある。 以上の理由から、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は最終年度となり、本研究課題「ソーシャルワーカーが現象学的研究を実践するための研修モデルの構築」に向けて、アクションリサーチを計画している。 6月に開催される日本社会福祉士学会「事例研究ワークショップ」に参加し、ソーシャルワーカーへの本研究課題の周知を行う。同時に、現場ソーシャルワーカーが研究したい事例に、現象学がどのように貢献できるのかを再検討する。 また同6月に開催される日本ソーシャルワーク学会では、「ソーシャルワーカー向け現象学研究のワークショップ試案」を発表予定である。口頭発表により、会場参加者との議論で研修内容のブラッシュアップを図る。 7月から8月にかけて研修受講者を募集し、9月から10月の期間で研修を実施する。アクションリサーチの手法により、ソーシャルワーカーがどのように現象学を理解し、応用していくのかを解明する。これによって、現象学的方法を習得するための研修モデルを構築することを目指す。
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Causes of Carryover |
本年度はほぼ計画通りに研究を遂行できたが、現地調査の際に謝金を不要とする協力者が数名おられ、その分が残金となった。次年度のアクションリサーチにおける協力者を増員し、調査の妥当性を高め、今年度分未使用額と次年度配分額を合わせてその謝金に充てる計画である。
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