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2023 Fiscal Year Annual Research Report

韓国におけるベーシックインカム構想と後発福祉国家のゆくえ

Research Project

Project/Area Number 21K01992
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

金 成垣  東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (20451875)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2024-03-31
Keywords韓国 / 後発福祉国家 / ベーシックインカム / アジア / 脱キャッチアップ
Outline of Annual Research Achievements

本研究においては、韓国で最近盛んになっているベーシックインカム(以下,BI)構想に着目して、(1)近年とくにコロナ禍の韓国で急速に広がっているBI導入論とその実験的実施の実態を把握し,(2)韓国におけるBI構想の政策的文脈とその意味を後発福祉国家論の視点から検討し、それをふまえて、(3)BIをめぐる韓国の経験が、韓国およびアジアにおける後発福祉国家のゆくえに対して示す理論的および政策的インプリケーションを明らかにすることを目的とした。
最終年度である2023年度には,前年度までの研究成果をふまえて,論文「韓国福祉国家とアジア(上・下)」(『アジア時報』55(1・2/3),2024 年2月/3月)を通して,(1)と(2)に関する論点をまとめつつ,(3)の課題に取り組んだ。同論文とともに研究期間全体を通じて実施した研究の主な論点を簡単にまとめると次の通りである。
韓国は、20世紀末のアジア通貨危機に発生した大量失業・貧困問題や21世紀に入って急進展した少子高齢化をきっかけに、先発国の経験を参考しながらそれらの問題に対応するための諸制度・政策を整備し、後発国として福祉国家化に乗り出した。しかし、それらの制度・政策が、韓国が抱えている問題にうまく対応できず、むしろ問題がさらに深刻化する状況が見受けられる。コロナ禍でその問題がより鮮明なかたちで顕在化している。韓国におけるBI構想は、そのような状況を打開し、新しい福祉国家への道を模索するために生まれた政策構想であった。重要なのは、韓国におけるBI構想が,先発福祉国家の歴史的経験からの脱キャッチアップを意味すると同時に、そこには、福祉国家そのものから逸脱しようとする動きも読み取れることでである。そして、そういった韓国の状況が、韓国のみならず、アジアにおける他の後発国にも多かれ少なかれ共有されていることにも注目すべきである。

  • Research Products

    (6 results)

All 2024 2023

All Journal Article (4 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] 韓国福祉国家とアジア(上)2024

    • Author(s)
      金成垣
    • Journal Title

      アジア時報

      Volume: 55(1・2) Pages: 29-46

  • [Journal Article] 韓国福祉国家とアジア(下)2024

    • Author(s)
      金成垣
    • Journal Title

      アジア時報

      Volume: 55(3) Pages: 33-44

  • [Journal Article] 韓国の深刻な少子化をいかに捉えるか2024

    • Author(s)
      金成垣
    • Journal Title

      週刊社会保障

      Volume: 3258 Pages: 42-47

  • [Journal Article] 韓国の予防接種――歴史,仕組みと現状,課題2023

    • Author(s)
      金成垣
    • Journal Title

      健保連海外医療保障

      Volume: 132 Pages: 53-73

  • [Presentation] 韓国福祉国家はどこへ向かっていくのか2023

    • Author(s)
      金成垣
    • Organizer
      社会政策学会
  • [Presentation] 韓国の社会保障制度改革にみる「脱キャッチアップ的挑戦」2023

    • Author(s)
      金成垣
    • Organizer
      アジア政経学会

URL: 

Published: 2024-12-25  

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