2022 Fiscal Year Research-status Report
ボランティアの個人主義化と地域福祉:クリティカル・ボランティアリング概念の可能性
Project/Area Number |
21K02010
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
桜井 政成 立命館大学, 政策科学部, 教授 (90425009)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 遼 日本福祉大学, 社会福祉学部, 助教 (40823167)
市川 享子 東海大学, 健康学部, 講師 (80803395)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | サービスラーニング / コミュニティ / ボランティア / クリティカル・ボランティアリング / 地域福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、クリティカル・サービスラーニングやボランティア・ツーリズムの学術的蓄積を参考にすることによって、「クリティカル・ボランティアリング」という新たな概念を提唱することをまず大きな目標としている。そして、エピソディック・ボランティアの語りも分析しつつ、その概念に基づいたコーディネート実践を試行し、その有用可能性を検討することを達成目標としている。 研究期間2年目の本年度は、現在のエピソディック・ボランティアの意識実態を解明するため、その経験者への半構造的インタビュー調査の実施(調査①)と、クリティカル・ボランティアリング概念応用実践を目的としたサービスラーニング実践を対象としたアクションリサーチ(調査②)を行うこととしていた。それらの研究は順次行ってきているが、とりわけ調査②について、研究協力者の力を得ながら、大学の授業実践においてエスノグラフィー的研究を実施することができた。そこでは、大学生の政治参加セルフ・エフィカシーと社会参加セルフ・エフィカシーとを、サービスラーニング型授業を通じてどのように高めることが出来るのか、という調査目的をもって、ある大学の実習授業へ研究協力者が参加する形で行われた。研究倫理上の配慮として、 調査への協力は成績評価に関わらないことを受講生に十分に周知したうえで、好評に際しての情報の取り扱いなども文面にて告知し、調査参加者の合意をサインしてもらうことで得て行った。 同調査の仮説は、既存の量的調査の結果を踏まえた仮説に基づいたものであったが、結果としてある程度、先行研究の結果を支持するものとなり、またサービスラーニング型授業を行う上での実践的示唆を与えるものであった。 また、サービスラーニングの効果に関するシステマティック・レビュー研究も、同時に本年度は進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究進捗状況については【研究実績の概要】に記載した内容と被るが、以下、再掲すると、 研究期間2年目の本年度は、現在のエピソディック・ボランティアの意識実態を解明するため、その経験者への半構造的インタビュー調査の実施(調査①)と、クリティカル・ボランティアリング概念応用実践を目的としたサービスラーニング実践を対象としたアクションリサーチ(調査②)を行うこととしていた。それらの研究は順次行ってきているが、とりわけ調査②について、研究協力者の力を得ながら、大学の授業実践においてエスノグラフィー的研究を実施することができた。 また同時に、サービスラーニングの効果に関するシステマティック・レビュー研究も、本年度は進めている。システマティック・レビューのプロセスに則り、研究代表者と分担者、そして研究協力者も協働し、まずは対象となる論文の収集と精査を行っている。いつ分析に至るかは、まだ本年度中の作業を進めていくその速度によるので今のところ未定であるが、ひとつの問題としては予定通りに研究が進んでいない現状がある。これは作業量に比して、研究者のエフォート時間が足りないことである。遅くとも来年度には分析し、何らかの研究成果を公表することを目指したいが、そのために次年度は新たに研究分担者を増やし、調査①調査②とあわせて、研究実施の加速化を図りたいと考える。 このように本年度においてある程度の予定していた調査を実施することができており、研究成果の結実に向けて順調に進んでいると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記の【研究実績の概要】および【現在までの進捗状況】に記載した内容と被るが、 次年度に向けては、まず調査②の発展的な実施である。「クリティカル・ボランティアニング」の概念化に向けて、アクションリサーチ的に学生のサービスラーニング型授業の実習を発展させ、政策提言や学生の政治参加にどのようにすれば結びつくのかを探索的に検討したい。 調査①については試験的にいくつかのインタビュー調査を行い、それらは研究成果になりつつあるものの、まとまった本研究課題の成果とはなっていない。このため次年度は、大学生を対象としたボランティア活動に関する実態意識調査(聞き取りや質問紙調査)を行うことによって、これまでのボランティア活動経験に関するエピソディック性質とそれがもたらす意識への影響を探索したいと考えている。 最後に、文献のレビューから発展的に行っているシステマティック・レビュー研究だが、既述のとおり予定通りに研究が進んでいない現状がある。これは作業量に比して、研究者のエフォート時間が足りないことである。遅くとも来年度には分析し、何らかの研究成果を公表することを目指したいが、そのために次年度は新たに研究分担者を増やし、調査①調査②とあわせて、研究実施の加速化を図りたいと考える。なお新たな研究分担者はすでに本年度から研究協力者として研究会への参加や、調査②およびシステマティック・レビューにも部分的に協力をしてきており、スムーズに本研究プロジェクト全体へと合流して頂けると考えている。
|
Causes of Carryover |
【現在までの進捗状況】ならびに【今後の研究の推進方策】で書いたことの繰り返しになるが、本年度は大学の授業実践においてエスノグラフィー的研究を実施することができたり、サービスラーニングの効果に関するシステマティック・レビュー研究をすすめるなどしている。これらの取り組みが十分に進んでおらず、そのために次年度に執行が必要となる予算が発生している。くわえて、本年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、学会発表ができないなど、研究のアウトプットが十分ではなかった。次年度に向けては、その予算も繰越となっている。
|
Research Products
(2 results)