2023 Fiscal Year Research-status Report
高齢者虐待予防のための対話型ロアー・マネジメントモデルの構築と研修プログラム開発
Project/Area Number |
21K02033
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
土屋 典子 立正大学, 社会福祉学部, 教授 (60523131)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 葉子 田園調布学園大学, 人間福祉学部, 准教授 (20586408)
長沼 葉月 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (90423821)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 対話型ロアー・マネジメント / 対話を促進するコミュニケーション技法 / 対話型ケアカンファレンス技法 / ちょこっとカンファ / 高齢者施設虐待予防 / 対話が生まれる枠組み / 対話が生まれる問いかけ |
Outline of Annual Research Achievements |
1 対話を促進するコミュニケーション技法の検討 本年度は主として対話を促進するコミュニケーション技法について検討を行った。 組織がサービスの質を確保し続けるためには、職員間の「対話」を促進し、必要な「タスクワーク」を推進するロアー・マネジャーの存在が不可欠である。本年度はスウェーデンウプサラ市の「特別な住居」においてロアー・マネジメントを担う介護リーダー及び管理者4名に対して職員間の「対話」を促進するコミュニケーション技法についてインタビュー調査を行い、インタビューデータを対象としてコーディング作業を実施した。その結果、「特別な住居」におけるスタッフ間の「対話」を促進するコミュニケーション技法としては、日ごろからA【対話が生まれる枠組み】を組織内に整備しておくこと、また、B【対話が生まれるタイミング】を意識すること、さらにC【対話が生まれる問いかけ】を実践することが不可欠であると整理できた。 2 対話型ケアカンファレンス技法の検討 2022年度までに開発、実施してきた対話型ケアカンファレンスの方法である「ちょこっとカンファ」の有用性を検証するため、研修を実施し、研修事前事後アンケート調査を行った。2023年末までに、250名の専門職に調査を実施できた。研修満足度については、「大変満足である」「満足である」の合計は98%であった。また、「ちょこっとカンファ」を現場で活用したいという回答は96%であった。ただし、やり方がわからない(2.4%)、職場の理解が得られるか不安があるという回答が18.6%あった。今後「ちょこっとカンファ」の活用方法の周知に関する検討の必要性が伺えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の進捗状況については以下の通りである。 ・対話を促進するコミュニケーション技法については、Uppsala市の高齢者介護施設におけるロアー・マネジャーの先駆的な取り組みについて、介護リーダーと管理者に対して半構造化インタビュー調査を行い、その結果の分析から、職場内で対話を促進するためのコミュニケーション技法を抽出することが可能となった。 ・対話型ケースカンファレンス技法については、高齢者介護施設におけるタスクワークと対話の促進を目的とした「ちょこっとカンファ」手法を開発し、その有用性を検証する調査を実施し、その結果の分析作業が進んでいるところである。その結果、『AAA式高齢者介護施設における虐待予防ハンドブック(仮称)』刊行に向けて(2025年度末刊行予定)、準備作業に取り掛かることができたといえる。 ・当初予定からの変更点としては、2023年度は研究代表者がサバティカルを取得し、スウェーデンにて国外研究を行っていたため、当初予定していた国内の学会発表が行えない状況であった。しかし、2023年度末には2つの論文を執筆、投稿し、掲載予定との返事を得ることができた。 これらのことから、「対話を促進するコミュニケーション技法の開発」、および「対話型ケースカンファレンス技法」の有用性の検証は順調に進捗しており、本研究のテーマである「高齢者介護施設におけるロアー・マネジメントモデルの開発」の研究は順調に進捗していると考える。よって、現在までの研究の進捗状況については(2)概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題の今後の研究推進方策としては以下の通りである。 1対話型ケースカンファレンス技法 「ちょこっとカンファ」研修を複数回行うとともに、これまでの研究成果をまとめ、「AAA式高齢者介護施設における虐待予防ハンドブック(仮称)」を刊行するための準備を行う。また、これまで実施してきた、(1)研修前質問紙調査、(2)研修後質問紙調査、の統計分析の結果をまとめるとともに、(2) 研修後質問紙調査の自由記述部分を質的に分析し、これらの結果を安心づくり安全探しアプローチ研究会のホームページにアップする。また、その一部を上記の刊行予定本に掲載すべく準備作業を行っていく。 2対話を促進するコミュニケーション技法 今年度整理した「高齢者介護施設における対話を促進するコミュニケーション技法」を中心とした施設内虐待予防研修プログラムを開発・実施し、その有用性を検証する。これらの結果をもとに、対話を促進するコミュニケーション技法をリバイズする。2025年度には、『AAA式高齢者施設における虐待予防ハンドブック(仮称)』刊行のための原稿を執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
1「特別な住居」における介護リーダーおよび施設管理職等に対するインタビュー調査は、ICレコーダーに録音し、そのテープ起こしを業者に依頼する予定であった。だが、調査では、英語及びスウェーデン語をミックスしてのインタビューとなり、スウェーデン語については、研究代表者がもっぱらインタビュー時に記録メモを取り、そのメモを参考にICレコーダーの音声を自らテープ起こしし、また、英語については、ワードの翻訳機能を活用し、テープ起こししその結果を分析したため、テープ起こし作業を依頼する必要性がなかった。 2研究代表者がサバティカルにて国外研究を行っていたため、学会発表を行うことが出来ず、交通費等を使う必要性がなかった。また、アルバイト等を活用することもなかった。
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