2023 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Reform School "Hokkaido Home School" Headmaster ,Fujita Shunji's Daily Notes: "Proof-based Description of Growth of his Dormitory Pupils
Project/Area Number |
21K02041
|
Research Institution | Miyazaki International College |
Principal Investigator |
河原 国男 宮崎国際大学, 教育学部, 教授 (00204751)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 試練 / 教育共同体 / 対話的関係 / 実証 / 留岡幸助 / 谷昌恒 / 藤田俊二 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.藤田俊二日誌のデータ入力。整理番号113(2022.9.13-2023.5.1)、同139(2023.5.2-5.15)、同34(2023.5.16-6.19)、同47,49,59(2023.4.11-5.2)、同81(2023.3.6-)。同139(2023.5.2-5.15)。その他。整理番号は藤田の石上舘に入寮した147名の通し番号として、個人情報保護の観点から研究上付与した。 2.寮長藤田俊二と校長谷昌恒との間に、対話的関係が示されていたことを実証的に明らかにした。具体的には、校長講話「ローマ人への手紙」に対する寮生たち十数名の受けとめについて、寮長藤田がどう理解しているかを日誌分析し、両者がそれぞれ固有の役割を果たして協働的関係を示していることを明らかにした。すなわち、谷が数回の校長講話において「ローマ人の手紙」を取り上げて「患難」の経験が「徳の試練」となる、と寮生たちに語り、「難儀」を「有り難い」とする同校の中心的な理念に直結する考えを提示していたことを寮生作文によって追跡し、校長としての谷の主導的役割(理念提示)を確認し、他方で、寮生それぞれの受け止めについて、寮生の個人的足跡に即して肯定的に受容しようとする藤田の役割(個人史に即して理念を実証する)を明らかにした。そうした日誌の特質の背景について創設者留岡幸助の旧約聖書理解と、藤田の未発表原稿「誰れが悪いのでもない」と関連づけて考察するとともに、その考察を踏まえて、北海道家庭学校が「試練」を理念とする教育共同体として成り立っていることを理念型的概念として構成した。 3.寮長藤田の夫人セツ子の寮母としての家庭的養護にかかわる役割について、すでに入力済みの日誌資料を中心に該当部分について抽出した。 4紋別郡遠軽町の北海道家庭学校を訪問し、以上にかかわって研究調査するとともに成果報告できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期から後期まで、25年にわたる日誌が<成長証明的>な実践記録として成立してきたであろう、という本研究の主題の重要部分について、一昨年の研究成果に続いて昨年、令和5(2023)年度も解明し、実証的な論文(55頁)として公表できた。他方で、ひとつの論文作成に集中することで、複数の論文作成に至らなかったことは、課題を残すことになった。この点で、概ね順調という評価に値する。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.寮母藤田セツ子夫人が寮生と関係において家庭的養護にかかわって、どのような役割を果たしてきたか、藤田の日誌を通じて実証的に明らかにする論文(第三論文)を作成する。今年8月末までに作成する。 2.寮生との日々の暮らしの中で、「ユーモア」あるいは「微笑」の表情、言動について見出し、日誌に積極的に記述する藤田の姿勢を具体的に跡付け、その意義を解明する。 3.藤田日誌を引き続きデータ入力する。 4.すでに連絡のある名古屋市在住の卒業生(整理番号81)と面会して、これまでの研究成果が示す知見について紹介し、その受け止めについてヒヤリングし、妥当性を検証する。 5.これまでの藤田日誌研究を通じて明らかにされる北海道家庭学校像から、「学校」概念を一種の教育共同体として理論的に再構築する。
|
Causes of Carryover |
1.学部紀要の編集委員会の都合によって公刊が遅れて、その結果、研究論文の抜き刷り印刷が令和5(2023)年度ではなく、次年度になったこと。 2.研究対象のご遺族(函館市)に対して研究報告するとともに、北斗市の藤田俊二旧宅で資料調査する機会が、令和5年度には確保できなかった。 以上の二つの理由から「次年度使用額」が生じた。 1については、すでに4月の時点ですでに対応した。2につては5月の中旬(18-20日)に実施する計画である。
|