2021 Fiscal Year Research-status Report
児童養護施設における「人生の樹」を活用したライフレビューに関する探索的研究
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21K02043
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
柴田 健 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (50361001)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 人生の樹(木) / ナラティヴ / 児童養護施設 / ライフストーリーワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
児童養護施設入所中の児童の多くは度重なる分離喪失体験や虐待等の不適切な養育により,記憶の断片化が起きたり,入所に関しての不十分な説明などのために家族や出自に対して十分理解していなかったりするものが多い。本研究の目的は,こうした児童の生い立ちや自身の人生の理解のために,ナラティヴ・セラピーの応用形態である「人生の樹」による支援を活用することができないかどうかを検討することである。 この目的のため,2021年度は,近隣の施設と児童相談所の職員に対してアンケートとインタビュー調査を実施,加えて専門家によるナラティヴ・アプローチと「人生の樹」に関する研修会を開催を予定していた。しかし,COVID-19関連の諸々の影響により,研究の推進が妨げられた。 そのため2021年度は,近隣の施設に勤務する心理士及び処遇職員への調査(アンケート及びインタビュー)を行い,その結果をもとに研究の方向性を再検討することとした。そして専門家を招聘しての研修会は次年度に実施することとした。 調査は近隣の児童養護施設,心理治療施設,自立支援施設を対象として行われた。職員の多くは入所児童が自身の生い立ちや過去を理解することの必要性を感じているものの,日常的に繰り返される問題行動の対応に追われ,実施のための時間的・心理的余裕がないことが明らかとなった。また,職員は重篤な問題行動に対しては児童の出自や虐待の影響を想定するのに対し,軽微な問題行動に対しては児童の性格や資質等にその原因を帰属することも明らかとなった。これらの調査結果を受け,実践研究の対象である児童養護施設において,問題行動への対処プログラムの研修と,これを基本としたケースコンサルテーションを各10回,計20回実施した。その結果,この施設での問題行動が大幅に減少したことが職員から報告された。この介入は,今後の実践研究の準備として重要な介入だったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19感染拡大下で,調査対象とした施設の多くで感染者が出てしまい,しばしば調査が中断された。また,大学の方針により,県外からの関係者の受け入れが規制される状況も長く続いた。さらに,研究代表者がエフォートを教育領域に割かなければならなくなり,相当のエフォートが減じた。こうした条件が重なる中で,当初の研究遂行に変更が生じてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1年目と2年目の実施内容は,もともとは段階的に実施することを想定していたが,2021年度の調査の進捗に遅れがあるために,1年度の未実施分と2年度の実践研究を並行して行うこととする。実践研究の対象としている児童養護施設では,問題行動への対処プログラムの研修とコンサルテーションを約1年間継続したことにより,人生の樹の取り組みを行う基盤が整ったと判断できる。よって,人生の樹のプログラムを試験的に導入する中で,専門家の招聘による研修会の開催と調査の残りの部分を実施し,適宜プログラムに修正を加えていきたい。
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Causes of Carryover |
質的研究を行うためのアプリケーションと,アプリケーションを運用するための解析装置(パソコン)を購入したために,物品費の執行額が多くなってしまった。一方,専門家を招聘しての研修会は実施できなかったので,旅費,人件費は執行されていない状況である。昨年度実施できなかった研修会については,今年度実施することとし,それに伴い旅費,人件費等の支出が見込まれている。
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Research Products
(1 results)