2022 Fiscal Year Research-status Report
失語症者の実用的コミュニケーション能力に着目した支援プログラムの開発と活用
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21K02047
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
坊岡 峰子 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (80405521)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 失語症 / 実用的コミュニケーション-CADL検査- / コミュニケーション支援 / 実用コミュニケーション能力評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、失語症者および日常の会話相手となる家族や介護者などに対して、コミュニケーション支援をすることである。そこで、当該年度はその支援の根拠となる実用的なコミュニケーション能力に着目した評価ツールである、「実用コミュニケーション能力検査―CADL検査―」の内容を現在の生活様式に併せた改訂を行うために、病院など臨床経験のある言語聴覚士(以下、ST)に対して、アンケート調査を実施した。 アンケート調査は、研究代表者がSNSで直接連絡をとれるSTを中心に依頼し、Googleフォームを使用して実施した。その結果、84名から有効回答が得られ、CADLのような日常生活場面を想定したコミュニケーション能力を評価する検査は、98.8%が「必要」と回答したが、CADLの満足度については、「どちらでもない」が47.6%、「やや不満足・不満足」の合計が28.6%であった。さらにその満足度を選択した理由として「現代の生活様式にあっていないものがある」(複数回答可)が57.1%と、改訂の必要性が示された。さらに、改訂すべき項目を明確にするために、各項目に関して「必要・必要だが検討が必要・不要」の3段階で評価を指示した結果、「不要」とした回答者が21%以上の項目はなく、現在の項目を元に、固定電話や券売機などの様式を変更する必要性が明らかとなった。さらに、その変更方法としては、米国のCADL第3版の項目について、5件法(必要~不要)での評価結果が参考となることが示唆された。 以上の結果をCADL検査の著者代表であり、本研究協力者である綿森淑子広島県立保健福祉大学名誉教授とも確認し、今後CADLの試案版作成、試行を行い、さらにその結果に基づいたコミュニケーション支援と効果を検証していく予定である。 上記のアンケート結果は、令和5年度に開催される日本コミュニケーション障害学会での発表が受理されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の目的は、失語症者および日常の会話相手となる家族や介護者などに対して、コミュニケーション支援をすることである。そこで、当該年度はその支援の根拠となる実用的なコミュニケーション能力に着目した評価ツールである、「実用コミュニケーション能力検査―CADL検査―」の内容を現在の生活様式に併せた改訂を行い、令和4年度には実際に患者さんに試行し、そのデータ分析に依り改訂版を完成する予定であった。さらに、その改訂版の検査結果に基づき、実際にコミュニケーション支援を行い、その効果を分析することも予定していた。しかし、新型コロナウィルス感染症の影響により、本学部附属診療センターにおいて、患者さんに対面で検査を実施することは難しく、さらに学外の医療機関に依頼することは困難な状況であった。そのため、令和4年度には改訂に向けたアンケート調査を実施しが、当初予定していた、患者さんを被検者としたデータ収集が大幅に遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的および実施する内容は、現時点では当初の計画より大きく変更する予定はない。できるだけ、臨床現場でのデータを収集して、本研究の効果分析まですすめたい。しかし、データ収集は患者さんや現場のSTの協力も必要であり、短時間で十分なデータを収集することの困難さは予測される。そこで、今年度できる範囲でデータ収集・分析を実施し、可能であれば研究期間の1年延長により、当初の目標を達成したいと考えている。
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Causes of Carryover |
当該年度は、新型コロナウィルス感染症の影響により、実際に患者さんからのデータを収集することが困難であり、データ収集に伴う旅費、謝礼・報償費などを使用することがなかった。また、検査実施時には検査用のアプリを作成し、実施することを予定していたため、タブレットPCなどの購入も計画していたが、研究の遅れにより当該年度には最低限度の購入となった。 次年度には患者さんや臨床現場のSTにもデータ収集の依頼をすすめる予定であり、当初予定していた、旅費、謝礼・報償費、検査のアプリを提示するためのタブレットPCなどの関連機器を購入予定である。また、検査内容のアプリ化をすすめるため、共同研究者である島根大学理工学研究科の廣富哲也准教授と検討や、CADLの編集責任者である綿森淑子名誉教授と相談などもすすめる予定である(旅費、報償費)。さらに本研究は欧米の方が進んでおり、原版は米国で作成されたものであることから、海外からの情報を得たり、助言を得ることも計画している(学会参加費、旅費、書籍・文献費)。
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Research Products
(1 results)