2022 Fiscal Year Research-status Report
子ども虐待対策における精神科医療機関の機能活用の実態把握とその促進システム開発
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21K02048
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
松宮 透高 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (10341158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 信次 新見公立大学, 健康科学部, 教授 (80441484)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 子ども虐待 / 精神科医療機関 / 子育て支援 / ヤングケアラー / メンタルヘルス / 親 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,精神科医療機関を組み込んだ新たな子ども虐待対応システムを提示することにある。そこで,精神科医療機関における子ども虐待対応の実態および認識の把握,さらに精神科医療機関の機能を活用した先駆的子ども虐待予防活動例における要点抽出のための調査研究に取り組む。そこから,児童虐待対応機関と精神科医療機関との連携促進および精神科医療機関の機能活用による新たな子ども虐待対応システムを提示し,地域におけるその具体化に向けた研究展開への基盤とする。 2年度目にあたる2022年度も、前年度に引き続き大半の時期にインタビュー調査が叶わず計画に遅延を生じた。しかし、年度末より新型コロナウイルス感染症の落ち着きに伴う本格的なインタビュー調査に着手できる状況が整った。そこで、ACTセクションを持つ精神科病院や児童思春期病棟を設置する精神科病院を対象とした調査を実施した。メンタルヘルス問題のある親による子ども養育世帯の感知をアウトリーチにつなぎ家庭の状況をアセスメントする、要保護児童対策地域協議会への参画(支援会議への参加や個別支援会議の院内開催の受け入れ)を通した自治体との協働、院内における子育て世帯への積極的な支援姿勢の共有などが、その共通する特徴として浮かび上がった。すなわち、メンタルヘルス問題への対応機能やソーシャルワーク機能を地域に開き、診療報酬に直接関係しない、患者の子育てや患者に養育される子どもへの支援、地域関係機関との連携、といった機能の発揮が重要であるおとが把握できた。これらはまた、従来の精神科病院が十分機能発揮できていない点でもあり、子ども虐待対策において精神科医療機関の機能を活用する際の重要な課題もあぶり出したと言える。 また、最終年度に計画している全国調査に向けた準備を進め、令和5年度初頭の倫理審査申請に向けた準備を進めた。次年度にはその調査実施と分析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アンケート調査等に関する進捗は予定通りであるが、先駆的な支援事例へのインタビュー調査は十分なデータ収集ができていない。ただし、調査対象の絞り込みや交渉は進めているため、最終年度にリカバリー可能な水準と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、予定通りアンケート調査を実施する。新たな視点として、子育て中のユーザーにとって精神科医療機関がどう捉えられているのかについても調査することで、精神科医療機関の認識と対比することにより支援システム上の課題を明確化する。また、引き続き先駆的な支援活動例へのインタビュー調査も継続する。以上、①全国の精神科医療機関を対象にしたアンケート調査により、支援の実施状況やその必要性に関する認識を把握する。②市民を対象にしたWeb調査により、メンタルヘルス問題のある親の精神科医療機関等への支援ニーズを把握する、③先駆的な取り組みが見られる医療機関へのインタビュー調査を継続し、先駆的事例にみる取り組み、視点、支援環境などの要点を抽出する、という3つの調査を通して、研究目的の達成を図る。
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Causes of Carryover |
当初計画のインタビュー調査が年度前半にできなかったこと、想定していた機材購入が他の研究費でも調達できたこと、次年度の大規模調査の対象や方法を拡大したことから経費増が見込まれたことなどから、支出が少なくなり、また積極的に次年度の支出のために繰越金を発生させた面があることから、次年度使用額が大きく生じた。
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