2021 Fiscal Year Research-status Report
戦国・織豊期の日記原本を活用する仏教福祉史の事例集積と方法論構築に関する研究
Project/Area Number |
21K02051
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
大嶌 聖子 淑徳大学, その他部局等, 研究員 (60816221)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日記 / 仏教福祉史 / 原本史料 / 戦国・織豊期 / 福祉史の事例集積 / 福祉史の方法論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の検討対象は日本の戦国・織豊期とするが、この時期は福祉の概念が無いことから、福祉史の議論を深めるために、その前提となる福祉にかかわる事例をいかに抽出していくかを課題としている。これは、方法論の面からは、事例の少なさをいかに克服していくかという実験的な試みである。 具体的な検討としては、福祉的な事柄を抽出するための有効な方法を原本が残る日記から探ることである。しかし本年度はコロナの流行の影響もあり、原本史料の閲覧ができなかった。そのため、原本の閲覧以外の手段を考え、史料の記述内容について検討を深めることとした。 原本閲覧を予定していた史料は、松平家忠が書き残した「家忠日記」である。この日記の記事から、福祉的な要素を導き出すことに重点を置き、要素抽出の方法の1つを提示した。これらの点は、論文「前近代の福祉の視点を求めて―中近世移行期の日記の検討から―」にまとめた。 この論文では、歴史学で頻繁に使用されてきた日記史料を福祉的にどのように読み替えるか、言い換えれば、日記史料から、福祉的な事例をどのように抽出し福祉史に生かしていくか、具体的な方法を提示した。事例抽出にあたり、家忠がどのようなことに視点をあてて日記を書いていたのかを確認した。その結果、能動的に動いた記事に注目すると、人との出会いから紡ぎ出される「場」をめぐる記事であったことが判明し、家忠が自ら選択し行動していたと考えられる事柄、つまり、自ら充実感を持って行動していたことには「福祉」的な要素を見い出すことができた。そして、家忠の活動のなかの「福祉」的な要素には、仏教的な事柄が色濃く含まれていることも指摘した。 ここで検討した家忠の位置は、仏教を受容する側であり、その視点からの検討を行ったことになる。いわば福祉を受ける側の視点からの事例を抽出できたという点では、研究史を振り返ると重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
原本史料の所蔵先図書館が、新型コロナウイルス感染症対策等に伴って、外部者の利用を休止しているため、閲覧が叶わない状況にある。原本史料の検討が、本研究の中核であり、原本史料の閲覧によって検討を深めることを大きな目的としていたため、進捗状況は芳しくない。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、本来予定していた原本史料の閲覧ができない状況である。原本史料の閲覧によって進める研究内容と、史料の記述のなかから検討できる内容とを切り離し、二次的な資料(デジタルデータ等)を使用することも視野に入れて、研究を進める。差し当たっては、日記記事の中から「福祉」的な要素の抽出作業を引き続き進め、とくに仏教を受容する側の視点からの検討を行い、その事例を集積していく。 閲覧再開のときには、原本から判明することを集積した事例に加えた検討を行う。
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Causes of Carryover |
原本史料の閲覧がコロナウイルスの流行の影響でできなかったため。また現地への調査も同様の理由により、スケジュールが組めなかったため。
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