2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of synergistic mechanism of periodontal bacteria-derived LPS and palmitic acid in inflammatory cytokine production
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21K02079
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
横山 嘉子 聖徳大学, 人間栄養学部, 准教授 (40202395)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 歯周病 / 歯周病菌LPS / パルミチン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
血中のパルミチン酸がLPSの作用を増強するとの報告がなされている。歯周病罹患者がパルミチン酸を多く含む食品を摂取した場合には、慢性炎症を基盤とする生活習慣病さらには歯周病そのものの増悪を引き起こす可能性があることを示すと考えられる。本研究では炎症性サイトカインの発現に対するパルミチン酸などの脂肪酸と歯周病菌LPSとの相乗作用の機構について、受容体及びコファクターを中心に解析を進めることを目的としている。本実験では歯周病菌LPSとパルミチン酸との関連を検証することが第1の目的であるが、比較のためにすべての実験で大腸菌由来のLPSも使用する。本研究を遂行するために令和3年度に設定した基礎的実験及び結果は以下のとおりである。 LPSの構造は大腸菌由来と歯周病菌由来で異なっている。マウスマクロファージ由来RAW246.7細胞においては歯周病菌由来と比べて歯周病菌由来LPSの作用は弱いことが分かった。歯周病菌由来LPSおよびパルミチン酸を単独で投与した際に産生される遺伝子について、mRNA を抽出し逆転写しマイクロアレイを行ったところ、量的増加が認められた遺伝子としてTNFα、RANK、TLR4を同定した。リアルタイムPCRを用いてその発現量の変動を調べることを予定していたが、PCR関連の試薬の不足からマイクロアレイで検索したこれらの遺伝子の動向は十分つかむに至っていない。研究の実施計画では、歯周病菌LPSおよびパルミチン酸の単独での作用を把握したのち、それを参考に歯周病菌LPSとパルミチン酸を組み合わせて増強効果の有無の確認実験を計画したが、現在までの進捗状況で述べる通り、実験時間の制限、関連試薬の不足などで現在までに終了していない。 令和4年度は計画を整理して、本研究の目的である歯周病と炎症性疾患の関連を解明したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は持続する新型コロナ感染症に起因する様々な事象で実験計画の遂行が困難であった。本研究は聖徳大学の実験室設備を使用して行うことを想定して計画したものである。しかし、昨年度の計画はその端緒から感染症の4波、5波により実験室の使用が短時間に限られたこと、授業等が在宅になったことで大学から離れての生活になったことで、細胞の維持管理が非常に困難を極めた。細胞の良好な状態を保つことが、その細胞を用いて実験を行うためには必須であることを考えると、ほとんどの実験の遂行が極めて難しい状態であった。また、PCR関連試薬の不足が顕著になり、注文しても納期が未定と言われる事態が頻発した。DNAマイクロアレイの実験では細胞の適正な維持が時間的に難しいこととアレイの業務委託が滞ることなどから、この期間で一度しか解析が行えなかった。 さらに細胞培養に不可欠である血清のほとんどが輸入品であり、またロットチェックを行っても適正な血清の入手が困難であった。現在ではある程度試薬等の入手はできるようになってきたが、未だ正常とは言えない状態である。 以上のような事情で研究計画に遅れが生じている。今後は、DNAマイクロアレイの実験は行うことを断念しパルミチン酸の影響を想定されるいくつかの遺伝子の発現の解析に集中して検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究計画では交付申請書に記した項目の内、DNAマイクロアレイ実験で同定できたのはTNFα、RANK、TLR4の3個の遺伝子のみであった。その原因が3で述べたような事象の結果なので、DNAマイクロアレイではなく、PCRを含めた他の手段で確認実験を行う必要があると考え以下の実験を計画する。 RAW246.7細胞を用いて、歯周病菌LPS+パルミチン酸あるいはそれぞれを単独で投与した際に産生されるTNFα、RANK、TLR4の遺伝子についてその増減をリアルタイムPCRで確認する。またRAW246.7細胞で破骨細胞分化が生じる際に出現することが報告されているRANKL、RANK、酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼなどについてリアルタイムPCRを用いてその発現量の変動を調べる。さらにLPSの細胞受容体TLR4とRANKについては、蛍光抗体法により発現たんぱく質の量的変動と局在を解析する。EPA、DHAは、歯周病によって発症した種々の生活習慣病において、パルミチン酸の炎症亢進作用を抑制するとされている。このようなn-3系脂肪酸について、上記で得られた指標遺伝子の変動をもとに、抑制作用及び作用点に関しての解析を行う。これにより、相乗作用に関わる経路を明らかにし、その抑制法を構築する。 歯周病菌が惹起する炎症をどのような機序でパルミチン酸が亢進するのか、その詳細な機序はまだわかっていない。本研究ではパルミチン酸と歯周病菌LPSの作用機序の関わりを解明し、食事の欧米化が進む中、歯周病罹患者が陥りがちな負のスパイラルからの脱却とQOLの向上を目的とする。
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Causes of Carryover |
昨年度は、新型コロナ感染症の影響で、継続した細胞培養が難しかった。また研究室の学生も、資格取得のための授業時間確保で研究に携われる時間が限られており研究室内のマンパワーも不足していた。PCR関連試薬及び血清の入手が難しいなどの理由から実験の進行が遅れた。そこで、歯周病菌由来ではなく大腸菌由来LPSでその作用を調べ、次年度の歯周病菌由来LPSで行うPCR実験の予備的な情報収集を行ったため、使用額は少なくなった。 次年度は、培養のためのディッシュ、培養液、血清に加えPCR関連試薬を中心に購入の予定である。
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