2022 Fiscal Year Research-status Report
阿波ねさし味噌の微生物学的解析およびムコール麹を用いた新規大豆発酵食品の開発
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21K02085
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Research Institution | Shikoku University |
Principal Investigator |
岡崎 貴世 四国大学, 生活科学部, 教授 (10227738)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ねさし味噌 / ムコール / 発酵食品 / 大豆麹 |
Outline of Annual Research Achievements |
徳島県で古くから伝統的な製法で作られている「ねさし味噌」は、一般的な味噌と大きく製造方法が異なり、麹カビ(Aspergillus oryzae)を用いずムコール属のカビ(Mucor plumbeus)を利用して製造される豆味噌である。本研究では、ムコールの微生物学的な特性を明らかにし、ねさし味噌の発酵過程を解明することを目的としている。 ねさし味噌の製造には3年の熟成を要するが、本年度は製造2年目であった。熟成過程の味噌の微生物・理化学検査を行なった結果、2年目は味噌の性状(pH、酸度、微生物数など)に大きな変化は認められなかった。しかし、色調は一般的な味噌と同様に熟成期間とともに暗く変化していた。 また本年度は、徳島県内で「ねさし」の名称がついて流通している味噌の調査を行なった。なお、ねさしとは徳島の方言で「寝さす(寝かせる)」を意味し、熟成させた味噌の意味でねさし味噌と呼ばれている。したがって試料の中には、ムコールで作られたねさし味噌以外に、通常の味噌(麹カビで製造)を熟成させたものも含まれた。試料には徳島県内で入手した味噌と、比較として愛知県の八丁味噌(豆味噌)および徳島県の御膳味噌(米味噌)を用いた。県内流通のねさし味噌の麹の種類、熟成期間、理化学検査を行い、比較を行なった。その結果、塩分濃度は県西部で作られている豆味噌で高い傾向(13.7-16.3%)があり、色調(Y値)は八丁味噌に相当する黒さだった。今回の測定項目ではムコールで作られたねさし味噌と他のねさし味噌に明らかな差異は認められなかったが、さらに調査を深める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022(令和4)年度は、ねさし味噌の製造過程2年目の微生物検査及び理化学検査を行なった。研究計画通り、実施できている。そのため研究達成度は、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ねさし味噌の熟成期間は3年間である。2023(令和5)年度も引き続き、製造過程3年目の微生物検査および理化学検査を行なう。また、ねさし味噌はかつて各家庭でも作られていたことから、製造方法を知る人から聞き取り調査を行い、製造方法や味噌の特徴について記録を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2022(令和4)年度は、新型コロナ感染症のため関連学会の年次大会がオンライン開催となり旅費への支出が不要となった。また県内のねさし味噌醸造所等を訪ね、製造方法等の聞き取り調査を実施する予定であったが延期とした。2023年度に調査を実施し支出する予定である。
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