2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of Flow Behavior Effective for Detergency - Exploring the Potential as a DEtergent Solution for the Fine Bubble Water -
Project/Area Number |
21K02088
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
天木 桂子 岩手大学, 教育学部, 教授 (80193019)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ウルトラファインバブル水 / 洗浄液 / 流動挙動 / 界面活性剤水溶液 / 抗力 / 抵抗減少効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
洗浄に関わる物理作用の一つである洗浄液の持つ流体力の解明を目的として実験を行った.対象流体はウルトラファインバブル(UFB)水で,単純化した矩形流路を作成し,中央部に挟んだ布モデルであるメッシュ間隙を通過する際に生じるエネルギー損失をメッシュ前後の圧力差から抗力として算出し,各種条件下で比較することで洗浄にUFB水を活用する可能性を探った. 初年度は,各種界面活性剤をUFB水に溶解させた水溶液を対象とした流動実験を行った.用いた界面活性剤は,アニオン系の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)およびアルキル硫酸ナトリウム(SDS),カチオン系の塩化ベンザルコニウム(BC),ノニオン系のポリオキシエチレン(10)アルキルエーテル(AE(10))の4種である.布モデルはポリエステルメッシュで,糸密度などが異なる6種を用いた.得られた結果は以下の通りである. メッシュの糸密度と抗力の関係を見ると,これまで得られていた他の流体と同様,糸密度が大きくオープニングエリア面積が小さいほど抗力が高く,大きなエネルギー損失が認められた.一方,同一糸密度でオープニングエリア面積が異なる(1間隙のサイズが異なる)メッシュでは,オープニングエリアが小さい方が抗力が高く,溶液通過が可能な面積が影響していることが分かった.また,同一オープニングエリアで糸密度が異なる(間隙数が異なる)メッシュでは,糸密度が高い方が抗力が高かったことから,大きな間隙が数少ないメッシュより小さな間隙が数多いメッシュでよりエネルギー損失が大きいことが明らかとなった. また,界面活性剤UFB水溶液の抗力はイオン交換水に比べて低く,抵抗減少効果が認められた.しかし,UFB水単独の抗力とは差が認められず,界面活性剤添加の影響は確認されなかった.これより抵抗減少効果に対する両者の相乗効果は得られないことがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究1年目としては,ウルトラファインバブル(UFB)水に界面活性剤を添加した界面活性剤UFB水溶液の流動挙動を明らかにすることを目的としていたが,計画していた実験内容はほぼ実施することができ,全体として計画通り順調に進んでいると判断した. しかし,界面活性剤水溶液およびUFB水単独の流動挙動と今回行った界面活性剤UFB水溶液の結果はほぼ一致しており,両者の相乗効果を予想して臨んだ点からはやや異なる結果であった.しかし,相殺効果も認められなかったため,洗浄にUFB水を用いることの有効性は存在すると解釈でき,2年目に向けて良好な通過点になったと判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に引き続き,ウルトラファインバブル水に界面活性剤を溶解した水溶液の抗力を測定する.2年目は,メッシュ素材として金属製ステンレスメッシュを用い,1年目で行ったプラスチック製ポリエステルメッシュの挙動と比較することで,素材が抗力に与える影響を検討する予定である.これは,主として水中での電気的な反発(斥力)や引力の影響を探ることを意味しており,UFB水中のUFBの表面電荷および界面活性剤分子の帯電状況,メッシュ表面の電荷など様々な電気的因子の寄与を探る予定である. また,本研究でこれまでに得られているように,流体が抵抗減少効果を示すということは,様々な狭小空間を溶液が通過する際にスムーズに流れることを意味している.このことは,その部分に大きな流速をもたらすと解釈されることから,汚れ除去力の増大につながるとみてほぼ間違いない.本実験で対象としているUFB水もこの抵抗減少効果が認められたことから,UFB水が洗浄に有効に作用することを流体力の面からも明らかにできるめどが立っている.これは,新しい視点からUFB水を評価する研究として稀有な取り組みだと考えている. その意味でも,洗浄に流体力を有効に活用するという目的につながる本研究課題が,通常の水に比べてより流れやすい流体を探すという点を通じて解決できる一助となる取り組みだと確信し,今後も進めたいと考えている.
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Causes of Carryover |
本実験を行うにあたり,抗力算出の基本データである圧力損失測定のためのデジタルマノメータが古くなっていたため,既存装置から更新する予定で備品費を申請していた.しかし,実験を行った結果,現存機器でも引き続き測定可能と判断されたため,不具合が生じるまで継続利用することに決定した.結果,1年目終了時まで大きな不具合なく使用することができ,更新の必要がなくなった(途中で機器を変更することで従来の実験データとの連続性に支障が出ることを危惧した面もある)ことで,予算を執行せず2年目に繰り越すことになった.繰り越したとはいえ,現存装置は設置してからかなりの年数がたっている事実に変化はないため,様子を見ながら本課題の期間内でいずれ更新しなければならないと判断している. また,主たる実験試料である界面活性剤の価格が計画当初に比べて高騰しており,実験1条件に付き約1,000g(2~3本)以上使用することから,繰越金の一部は界面活性剤購入代金として執行する予定である.
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