2022 Fiscal Year Research-status Report
Non-destructive structural analysis of needle punching non-woven fabric by X-ray CT
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21K02089
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
金 慶孝 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (30504550)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 不織布 / XCT観察 / トレーサー繊維 / 不織布の変形 / 定量的評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では, CuI染色によってNylon繊維やNylon/AgI繊維と密度差を付けたトレーサー繊維(Nylon/CuI繊維)を作製し,2種類のトレーサー繊維を用いて作成したNP不織布の構造を解析することで,試料内で異なる位置に在った繊維がそれぞれどの位置に移動し,形成される杭状繊維束やStitch構造にどの様に影響するのかを調べた. 1層目をNylon/CuI繊維層, 2あるいは3層目をNylon/AgI繊維層, それ以外をNylon繊維層とした4層からなるウェブを, 針深度19.0 mm, 針密度40 punch/ cm2の条件でパンチングしNP不織布を作製した. X線CT装置を用いて分解能5μm/pixelの撮像条件で不織布を撮影し,各トレーサー繊維の3次元像及び厚み方向への繊維体積分率を算出した. NP不織布中の2種類のトレーサー繊維のみを可視化でき, トレーサー繊維層及びNPによって形成された杭状繊維束やStitch構造中の2種類のトレーサー繊維を区別できた.これにより2種類のトレーサー繊維を併用することで, NPにより各トレーサー繊維層から移動した繊維の形態や移動位置の同一試料内での比較, 各層の繊維が他の層に及ぼす影響についての調査が可能になった. また, Stitch構造が形成される不織布底面部の繊維群において, 1, 2層の繊維は同じ位置に混在いているのに対して, 1層目のトレーサー繊維と比較して3層目の繊維がより底面側に移動した. パンチング回数が増すと, すでに杭状繊維束を形成した箇所の上面にパンチング孔が生じ,その部分を針が通り抜けるため3層目の繊維がニードルに保持される可能性が高くなる.この3層目の繊維が,すでに1, 2層が形成したStitch構造を貫通後に針から外れることで, このStitch構造の下側に移動したと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
X線CT装置で、普通のNylon繊維とAgIで染色したNylon/AgI繊維を区別出来ることを利用して、NP条件に伴う繊維移動量の定量評価に成功した.また、Nylon/AgIトレーサー繊維層を持つ不織布の引張変形に伴う構造変化を可視化および定量評価を行った.この結果をまとめて,R4年繊維機械学会と繊維学会の年次大会、繊維学会秋季発表会、TRS-49th(京都)での発表を行った。これをまとめてTextile Research Journalでの投稿報文を準備している。 また、Nylon/AgIトレーサー繊維と普通Nylon繊維の中間的なX線級数係数、HU値をもつNylon/CuIトレーサー繊維の準備を進めたがCuIの染色に少し問題があり、計画よりは遅れたが、2つのトレーサー繊維の開発に成功し、同時に不織布の半分以上の構造形成の可視化に成功し定量評価を進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
Nylon/CuIトレーサー繊維の作製を試みている.Nylon/AgIトレーサー繊維と普通Nylon繊維の中間的なX線級数係数をもつトレーサー繊維があれば、4層構造の不織布の半分の構造を可視化および定量評価が可能になる.前年度までは2つトレーサー繊維を用いた実験を行えば、不織布構造の半分を可視化することができ、さらに、同時に形成される2層の構造を可視化することができた。一方、工業用として使用されるNP不織布は繊維同士の交絡点を増加させるため,ウェブを両面からパンチングして作製している.しかし,両面パンチングが内部構造に及ぼす影響についてはまだ解明されていない.そこで本研究ではウェブを両面からパンチングした不織布に注目した.X線吸収係数が異なる2種類のトレーサー繊維とX線CTを用いて内部構造を可視化した後,不織布の内部構造変化を片面パンチングと比較する.さらに、不織布構造の不均一から生じる実験の誤差も減らすのが出来ると考えている.このように解析を進めれば、NP条件に伴う不織布構造の層構造をより正確にすることができる.そして前年度研究に比べてより正確な不織布の内部構造の可視化や定量評価が出来ると期待している.また、トレーサー繊維を持つ不織布の圧出変形後、不織布の変化を可視化と定量評価へ挑むつもりである。
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Causes of Carryover |
コロナ感染防止対策として実験室への立ち居入り人数制限やX線CT測定の時間が足りなくなり、費用の計上が多くなされていなかったので、未使用額が生じた。今年度ではSPring-8での予備実験に伴う旅費の発生や2つトレーサー繊維の作製に伴い薬品など消耗品の使用が増えると見込んでいるので、R4年度の請求額と合わせて、消耗品購入に使用する。
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