2021 Fiscal Year Research-status Report
地域共生社会の実現に向けたユニット型特養入所者の社会関係を支える方策
Project/Area Number |
21K02091
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
立松 麻衣子 奈良教育大学, 家庭科教育講座, 教授 (60389244)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高齢者 / 地域居住 / 社会関係 / 居住性 / ユニット型特養 |
Outline of Annual Research Achievements |
ユニットケアは「相互に社会関係を築き自律的な生活を営む」「役割をもって生活を営む」「入所前の生活との連続性を図る」等を目指して制度化された。しかし、今、ユニット型特養においては、入所者の重度化、スタッフ不足等によって、入所者の社会関係を維持することが難しくなっている。この状況に対して、本研究では、入所者の家族関係を維持する取組と、入所前からの関係性をシームレスにつなぐ方法の検討によって、施設の居住性の向上を目指す。すなわち、居住環境整備がなされた空間(ハード)のなかで経年により生じた施設入所者の居住性の課題に対して、ケア(ソフト)による解決策を示そうとしている。 令和3年度は、ユニットケアの課題を明らかにするために、「A.ユニット型特養に対する質問紙調査」を行う予定をしていた。しかし、新型コロナウィルスの感染第5波(6月末~9月半ば)、感染第6波(令和4年1月半ば~)により、全国特養では入所者の感染防止対策が喫緊の課題となり、今は本研究の質問紙調査を行うべきではないと判断し、研究計画の立て直しを行った。 令和3年度は、入所者の「B.家族研修」の準備として、施設に面会に訪れた家族に対して本研究の意図を説明した。「B.家族研修」は、家族に日常的にユニット空間に居てもらうための研修である。令和4年度に研修を行う計画をしている。また、令和3年度は、「C.地域ケアネットワークに対する質問紙調査」の準備も行った。在宅高齢者が地域の互助活動に参加してできた関係性は、施設入所によって切れているのではないだろうか。本研究では、入所前後の関係性を切らない方法を検討しようとしている。そのために令和3年度は地域ケアネットワークのプレ調査を行った。さらに、令和3年度は、地域高齢者の生活意欲に関する介入研究と、要介護高齢者の生活課題に関する介入研究を論文にまとめ、本研究深化への足掛かりにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、新型コロナウィルスの感染拡大のために当初予定を変更し、「B.家族研修」「C.地域ケアネットワークに対する質問紙調査」の準備を行った。 「B.家族研修」(令和4年度計画)の準備では、施設に面会に訪れた入所者家族に対して、「D.家族をユニット空間の使用者にする取組」(令和5年度計画)に向けた研修の目的を説明した。そのなかで、コロナ禍において在宅要介護高齢者がサービスに接触する回数が減り孤独・孤立の問題が生じていることに加えて、家族介護者もまた孤独・孤立の問題が生じていることがわかった。そこから、在宅介護の家族介護者の社会参加の機会を「B.家族研修」「D. 家族をユニット空間の使用者にする取組」のなかに作ることができるのではないだろうかという考えに至った。令和4年度以降の取組は要介護高齢者の社会関係について時間的展望も併せ持って再考することが有効だろうと考えている。 「C.地域ケアネットワークに対する質問紙調査」の準備では、地域互助活動のうち認知症カフェの活動を任意に把握した。そのなかで若年性認知症には診断を受けたとたんに就労を中心とする社会関係からの離脱を強いられている現状があった。また、地域づくり活動に若年性認知症当事者の就労の機会を作っている活動では、若年性認知症の本人が地域課題を解決する活動の主体者になること、その活動が就労であることに意義があることがわかった。本研究では、施設入所者の社会関係が希薄化しているという課題に対して、地域での互助活動の時に培われた人間関係を入所後にもつなげようとしていた。令和3年度のプレ調査から、地域互助活動参加者の社会関係の構築、就労の機会の創出という視点ももって、令和4年度の「C.地域ケアネットワークに対する質問紙調査」を行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に計画をしていた「A.ユニット型特養を対象とした質問紙調査」は、新型コロナウィルスの感染状況を見極めて、令和4年度または令和5年度の適切な時期に行い、ユニットケアの現代的課題を明らかにする。終の棲家にもなる特別養護老人ホームのような施設の居住環境では、入所者の加齢によって当初目的とは異なる生活課題が生じることは必至である。ユニット型特養においても入所者の重度化によって施設の居住性が低下していると考えられる。このような整備されたハードのなかで起こっている問題の実態を明らかにしたい。 令和4年度は、家族研修の準備として施設に面会に訪れた家族への説明を行いつつ、「B.家族研修」を実施する。その際には、「現在までの進捗状況」に記した通り、家族介護者の社会参加という視点も加えて実施していきたい。さらに、「C.地域ケアネットワークに対する質問紙調査」を実施する。その際には、「現在までの進捗状況」に記した通り、認知症当事者の社会関係を構築する、就労の機会の創出という視点も加えて、地域ケアネットワークの活動実態や活動継続の課題を把握していきたい。地域ケアネットワークと施設の両者の課題を解決するような方策を示すことが、地域と施設が一体となった助け合うコミュニティづくりにつながると考えている 令和5年度には「D.家族をユニット空間の使用者にする取組」を実施する。そして、施設入所者と家族をつなぐ方法を検討する。また、研究最終年として、A~Dの結果から、ユニット型特養(ハード)で起こっている居住性の課題に対して、ケア(ソフト)による解決策を示す。高齢期にどこに住まおうともシームレスに関係性を維持できるようなサポートのあり方を検討することは、地域共生社会の実現に向けた一歩になり、同時に、そのケアを提供できるユニットケアの現代的意義を示すことにもなると考えている。
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Research Products
(2 results)