2021 Fiscal Year Research-status Report
Proposal of function in housing management and of housing management model
Project/Area Number |
21K02098
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
浅見 美穂 日本女子大学, 家政学部, 教授 (30581615)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 住居管理 / リフォーム / 戸建て住宅 / 住宅性能 / 修繕 / リフォーム業者 / ライフステージ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、①戸建て住宅の居住者が行う維持管理のライフステージ別ガイドラインを作成し、②住居管理に関わる職能に求められる役割を整理する。その上で③良質な住宅ストックが住宅市場に好循環する、居住者のための住居管理モデルを提案することである。①の戸建て住宅の維持管理のガイドライン作成のためには、居住者の日常の清掃や手入れ、点検、DIYによる修繕方法やリフォームの実態を知り、適切な維持管理行為が、住宅の耐用年数や性能向上に繋がるエビデンスを揃える必要がある。また様々なライフステージに対応できるよう、地域や住宅の構法に偏らない居住者の管理意識や住替えへの意識の定量調査が必要である。 2021年度の調査研究により、戸建て住宅の居住者の約7割が現在の住宅に老朽化や不具合など気になる箇所があるが、居住地域への継続居住を望み、そのための維持管理やリフォームの必要性も約半数が認識していることが明らかになった。住み替える場合にも戸建て志向が高いが、管理のしやすさはあまり重要視されておらず、維持管理やリフォームの際にさまざまな困りごとがあることがわかった。一方で管理意識の高い居住者は、維持管理の知識を経験から自然に身につけ、固定的な業者がいることでさらに管理に積極的に取り組めていることも示唆された。リフォームの経年的な実態を把握することで、ライフステージ別ガイドラインを作成するための元データが整理できた。 持続可能な住宅地の課題に対し、新しい住宅政策の目標も掲げられているものの、居住者の多くが維持管理の意味や価値を実感できていないために未だに浸透していない。居住者の意識の啓蒙には、性能向上の効果や良好な管理状態の評価の仕組みも考える必要がある。さらに住生活産業の関係者の実態を把握し、住宅の維持管理に必要な専門家の職能を確定し、その職能の社会的役割が、社会モデルとして機能するかを検証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、4-6月に文献調査と居住者への事前調査のまとめを行い、調査報告として、5月の家政学会大会大会と9月の日本建築学会大会にて口頭発表を行った。調査結果を基に、住宅の維持管理項目を洗い出し、7月に戸建て住宅の居住者(所有者)の実態調査を行った。対象者は、戸建て住宅の所有者かつ居住者とし、一都三県の都市部(東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県内)を対象地域とした。住宅の維持管理の現状、住宅の維持管理の意識、住宅のリフォーム履歴と費用、住宅の点検・補修における専門家や施工者などの職能との関わり、永住意識や資産価値としての考え方などを探った。Webアンケート調査により、各都県270件以上、合計1096件の回答を得ることができた。アンケート調査結果から、居住者のライフステージ別維持管理ガイドラインの元になるデータを得られた。 また行政の関係部署、事業者などへのヒアリング調査としては、各自治体のホームページ閲覧や電話によるヒアリングにより、住宅の管理に関わる取り組みの最新情報と実態把握を行った。 以上の調査により、居住者が持つ課題を整理することで、戸建て住宅の住居管理に関する住宅政策のための知見を得ることができた。①居住者の責任に対しては、ライフステージに応じた住居管理とリフォーム推進のための情報提供や、個別の修繕時期のガイドライン作成と修繕費用の積立て計画、修繕履歴の保存などの啓蒙、②住宅の物理的側面に対しては、築30年目の建物診断の意義、③社会的側面としては①、②を担う職能の認定とその運用の仕組みの整備の必要性を明らかにすることができた。これらの成果をまとめて11月に日本建築学会計画系論文集に投稿し、査読の結果、2022年2月に採用通知を得ることができた。 3月には2022年度に向けた事前調査として、リフォーム業者へのWeb調査も行っており、概ね当初の計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、9月までに戸建て住宅の点検や修繕工事の担い手となる、建築士や施工業者の実態調査を行う予定である。3月に行ったWebによるリフォーム業者への予備調査の結果を受けて、質問項目の見直しや対象者の絞り込みを行う。対象者は既存住宅状況調査技術者(建築士)、住宅リフォーム施工業者とし、対象地域は一都三県(東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県内)の都市部とする。調査方法はアンケート調査、ヒアリング調査とし、登録者名簿が公開されている既存住宅状況調査技術者、リフォーム業者への郵送またはメール送信とする。調査内容は①住宅の品質管理、維持管理への意識と取組み事例、②修繕、リフォーム設計・工事における配慮点、③地域や居住者への貢献意識と継続性、④専門技術以外のスキル意識などである。加えて施工業者には⑤施工上の安全管理、⑥建築職人の技能スキル育成など、戸建て住宅の維持管理を担う直接の職能の現状や課題を探る。 10-2月には個別事例の調査を行う。対象者は戸建て住宅の居住者(所有者)、建築士、施工者、協議会、NPO団体などとし、対象地域は一都三県の都市部とする。調査方法はヒアリング調査により、調査内容は住宅の所有者とホームドクター的関係性の構築ができている建築士や施工業者の取り組み事例や、関係主体が連携して既存住宅の商品化などを試ている事例を選定し、それぞれの方法論や住居管理が適性に好循環していくための職能の役割と関係性を考察する。 1-3月はそれらの調査のまとめをし、住居管理のための職能の役割を整理する。2021年度に明らかにした居住者側の課題と、2022年度で明らかにするサービス提供側の課題とを照らし合わせ、 2023年度の住居管理モデルとして社会的に機能するかの検証作業へ繋げる。研究の成果は日本家政学会、都市住宅学会、日本建築学会等で口頭発表を行い、建築学会計画系論文集に投稿する。
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Causes of Carryover |
建築学会に投稿した論文の投稿料93,500円を掲載決定した2月に支払う予定でいたが、掲載される2022年8月に支払えば良いことになったため、その分が次年度使用額となった。調査研究の予定には変更はない。
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