2021 Fiscal Year Research-status Report
Structural and functional analysis of safflower coloring compounds with metallic luster incorporating DFT calculations.
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21K02099
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Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
Principal Investigator |
大嶋 正人 東京工芸大学, 工学部, 教授 (20223810)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 色素化合物 / カルサミン / DFT計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
色素化合物として単離され、核磁気共鳴スペクトル等により得られたカルサミンの構造をもとに、DFT計算によって構造最適化を行った。巨大分子であるためにいくつかの構造異性体が考えられ、さらにローカルミニマム構造もいくつかあることが予測できた。構造を異性体を生じる要素としては、1,3-ジケトン構造、1,5-ジケトン構造についてはエノール型との互変異構造、1,3-ジエン構造のシソイド/トランソイドの違い、2つのグルコース環の相対的な配置である。シミュレーション計算では、これらの要素が異なる構造を列挙し、予備的な計算段階で収束しなかった構造を除き、大部分に対して構造最適化と振動計算を行ってエネルギーを求めた。 これらの計算で得られた構造のうち、エネルギーが低く、室温付近で互いに変換しうる構造を基に紫外可視吸光スペクトルをシミュレーション計算したところ、実測値と最大吸収波長がまったく一致しないことがわかった。カルサミンの構造を平面的に見ていると赤く抵触する領域に見合う共役系があるように思えたが、構造最適化の過程で分子中央部分のねじれによって平面構造ではないことがわかったからである。直ちにその他の測定値と併せて、再検証し、カリウム塩である可能性を想定することができたので、計算シミュレーションはカリウムイオンを追加して再度構造を検証した。カルサミンは多くの水酸基を有している化合物なので、カリウムイオンの位置の特定には相応の計算時間を必要としたが、最終的に安定な構造を求めることができた。カリウムイオンを含む構造は核磁気共鳴スペクトルと矛盾のないものであることがわかり、さらに並行して進めた特殊な条件下で測定した色素化合物の質量スペクトルによりカリウム原子を含むことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究を始めるきっかけとなった本学の名誉教授が2021年度に死亡し、同名誉教授の専門知識を前提としたディスカッションができなくなった。そのため、情報収集等にやや支障をきたし、結果として全体の計画がやや遅れ気味である。 ただし、その他の部分については特に遅れはなくおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度までの検討により、概ね色素化合物カルサミンの構造を特定したと考えているが、立体構造の一部についてはやや疑問がある。全体としてやや遅れ気味であるが、特に方針の変更等は行わず、当初申請書に記載した以下の計画を進める。 光学的計測、電子顕微鏡等の現代の最新機器を駆使した色素膜の物理的な構造解析で赤色から緑色金属光沢が発現するまでの原理を明らかにすることに重点を置いて進める。 実験では構造・干渉色の検討としての反射・透過光色の角度依存性、直線および円偏光、色素膜の断面構造の検討、構造・干渉色および分子構造由来反射色の検討としての色素膜の高次構造の検討、カルサミン膜の電気特性の検討も併せて進め、これらの実験とこれまでに構造決定された色素化合物(候補も含む)との関連についても計算シミュレーションを含めた検証を行う。
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Causes of Carryover |
当初予算のうち、学会発表等の旅費として計上したもの、論文投稿費として見込んでいたものが繰り越しになった。2021年度も新型コロナ感染症への対応があり、工学研究科長としてこれらを進めていて、研究にかかわる発表関係で手の回らない部分が生じた。
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