2022 Fiscal Year Research-status Report
生活シーンと視覚特性の加齢変化を考慮した一日を通した照明の適正化手法の究明と提案
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21K02108
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Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
井上 容子 放送大学, 奈良学習センター, 特任教授 (70176452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
許 載永 奈良女子大学, 生活環境科学系, 講師 (30845590)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 適正化照明 / 動的照明 / 生活シーン / 加齢 / 昼夜比較 / 季節比較 / 概日リズム / 概年リズム |
Outline of Annual Research Achievements |
明視性と雰囲気性に優れ、生活リズムを乱さない質の高い光環境の維持が今日の照明計画の目指すところである。生活シーンや年齢(視覚特性)によって適正条件は異なるため、これらに対応出来る、一日あるいは一年を通した照明の適正化を理想とする。これの達成はストレスのない視環境を実現し、高齢者の健康で自立した生活、無駄な照明エネルギーの削減にも寄与する。 しかし、色温度、調節速度、生活シーン、視覚特性を組み合わせた知見は極めて限定的で、シーンの移り変わりへの対応にまで至らない。本研究では、照明計画の基本的要因である照度と色温度を取りあげ、シーンや年齢によって適正条件が異なるメカニズムを明らかにし、合理的かつ普遍性のある動的な適正化手法を構築する。適所適時適人適光であり、生産性とスマートライフの両立への寄与も大である。 2021年度、2022年度ともに、COVID-19のため、本研究の中心となる実験室(密閉小規模空間)での被験者実験の効率的推進は困難であった。そのため、N数、実験条件数ともに十分とは言えないものの、2021年度は、過去に取得済みの若齢者結果と比較するための高齢者における照度色温度同時変化実験を実施し、適正な調節速度の加齢に伴う変化を検討した。2022年度は、2021年度結果の分析を引き続き行うと共に、次の2点について新たに研究を展開した。 1)研究の更なる展開のために、単なるシーン変化への対応だけでなく、一日あるいは一年を通した照明の適正化を目指すための試みとして、適正条件への昼夜および季節の影響についての検討に着手 2)COVID-19禍にあって、提案手法評価のための事務所(オフィシャル空間)や住宅(パーソナル空間)などにおけるモニター実験(提案データの実用性検証)の協力体制が構築できないため検証方法を再考のうえ一部実施
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画は、次の3点の究明である:①任意ケースの適正条件(照度・色温度)の推定法の構築、②不快感・違和感を生じさせない照明の変化速度(調光・調色)の推定法の構築 ③提案手法の検証。このために必要な新規データは、照度と色温度の同時変化に関する高齢者データと、事務所や住宅等でのモニター評価(③)である。 2021年度には高齢者における照度色温度同時変化実験を実施し分析を行っている。2022年度は、2021年度分析結果と過去に取得済み若齢者データとを併せて、照度色温度同時変化における適正な調節速度の年齢(若齢者と若齢者)による変化についての分析を継続実施している。更に、新たに次の2点について研究を展開した。ただし、COVID-19禍のため、高齢被験者の獲得が困難であったため、若齢者のみの検討に留まっている。 1)適正条件への概日リズム・概年リズムの影響に関する予備的検討:単なるシーンの変化への対応だけでなく、一日あるいは一年を通した照明の適正化を目指すために、適正条件への昼夜および季節の影響についての予備的検討に着手。朝と夜の照明評価実験、および、異なる季節(夏・秋・冬を実施、春は2023年度に実施)による照明評価実験を実施し、昼夜・季節による違いについて検討 2)実験データの生活空間への適用性の検討:COVID-19禍にあって、事務所(オフィシャル空間)や自宅(パーソナル空間)などにおけるモニター実験の協力体制が構築できないため検証方法を再考。生活空間における検証が必須であった理由は、実験では実際に行為を行うのではなく、行為をイメージしての照明評価であることが最大の理由である。そこで、実験室においてではあるが、実際に作業を行った上での評価実験を行い、イメージ評価との比較を行うことで、限定的ではあるが既往データの検証を試みている。 これら成果は、2023年度学会において公表する。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、状況が許せば、2022年度に若齢者を対象に実施した実験を高齢者についても行い、昼夜・季節による違いの年齢比較を行う予定である。また、適正条件の日変化実験に併せて取得した生理データを分析して、主観評価との対応について検討する。 その上で、研究課題である「生活シーンと視覚特性の加齢変化を考慮した一日を通した照明の適正化手法の提案」を行うとともに、一年を通した場合の適正化手法にも言及したい。 なお、これまでの2年間は、三密を回避しての実験データ取得であったため、定性・定量の両面ともに信頼できる提案を行うには、N数・条件数共に不足している。そのため、被験者等謝金の未使用額も生じている。そこで、可能であれば研究期間を延長し、データの充実を図り、提案の信頼性を高めたい。
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Causes of Carryover |
2022年度は、COVID-19感染防止のために、高齢被験者実験を見送ったこと、更に実験条件数を大きく絞り込んだため、被験者および実験協力者謝金が殆ど生じなかったことが次年度使用額が生じた主たる理由である。また、大半の国内外の学会が対面では実施されなかった事に伴い、成果公表および資料収集・情報収集のための交通費の大半が不用になったことも次年度使用額が生じた理由である。 次年度使用額は、実施が可能となった場合の高齢者実験の謝金として使用する。他に、既往結果も含め実験データを多角的に分析していくための研究支援者謝金、成果公表の為の学会参加費・交通費としても使用する計画である。
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Research Products
(10 results)