2022 Fiscal Year Research-status Report
Effect of processed food for egg allergy -relation between the solubility of allergen and the symptom provocation-
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21K02141
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Research Institution | Nagoya University of Arts and Sciences |
Principal Investigator |
和泉 秀彦 名古屋学芸大学, 管理栄養学部, 教授 (80351211)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 鶏卵 / アレルゲン / 溶解性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究において、鶏卵白を小麦粉、米粉、および片栗粉と混ぜ、焼成してモデル鶏卵加工食品(小麦クッキー、米粉クッキー、卵ボーロ)を作製し、鶏卵白以外の副素材の違いにより、鶏卵白タンパク質の溶解性の違いがあることが明らかとなった。タンパク質を含有する小麦粉や米粉を副素材として使用すると、鶏卵白タンパク質のほとんどが不溶化するのに対して、タンパク質をほとんど含有しない片栗粉では、鶏卵白タンパク質は一部可溶化していることを見出した。 そこで、2022年度は、片栗粉(60g)に対して卵白(10もしくは20g)及び卵黄(10もしくは30g)を混捏し、オーブンで焼成(170℃、15分)することでモデル鶏卵加工食品を作製した(全4種)。凍結乾燥後の試料中のタンパク質量は、ケルダール法により定量した。試料中の卵白タンパク質量が等しくなるように試料を量り取り、塩溶性タンパク質をPBS溶液、不溶性タンパク質をSDS+urea溶液及び2-メルカプトエタノール(2-ME)溶液にて段階的に抽出した。その後、SDS-PAGEでタンパク質の組成及び溶解性を解析した。また、Lowry法で塩溶性タンパク質量を定量した。 SDS-PAGEの結果、全ての試料においてPBS画分よりもSDS+urea溶液画分及び2-ME溶液画分でバンドが濃く検出された。PBS画分のLowry法の結果、同じ卵白含有量の試料間で比較すると、卵黄含有量が多い試料の方が塩溶性タンパク質量は多かった。一方で、PBS画分のSDS-PAGEの結果、卵黄含有量が多い試料の方がオボアルブミン(OVA)と推定されるバンドは薄かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの成果により鶏卵白タンパク質は、他のタンパク質の存在により、不溶化することは明らかとなった。タンパク質の消化性は、タンパク質の未変性、変性、不溶化が寄与している可能性があるが、精製した特定の鶏卵白タンパク質(オボアルブミン、オボムコイド)を、完全に変性および不溶化させる方法を確立させることに手間がかかり、消化性および吸収性の実験になかなか取り掛かれない状態であった。
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Strategy for Future Research Activity |
鶏卵アレルギーにおける主要アレルゲンであるオボアルブミンおよびオボムコイドを変性あるいは不溶化した試料を作製し、その消化性を未変性状態のもものと比較する。さらにそれらをマウスに経口投与した後、小腸を取り出し内容物をPBSで回収して、SDS-PAGEおよび卵白アレルゲンに対する特異抗体を用いて、卵白アレルゲンの小腸内での状態を解析する。さらにそれらを胃内投与し、門脈血あるいは末梢血を採取した後、吸収された鶏卵アレルゲン量を阻害ELISAあるいはサンドイッチELISAにより定量する。 未変性、変性および不溶化卵白アレルゲンの消化性および吸収性に顕著な差異が認められれば、卵白に対するアレルギー反応にも影響を及ぼすことが考えられる。そこで、まずマウスにオボアルブミンあるいはオボムコイドを繰り返し腹腔投与し、アレルギーを誘導する。感作されたかどうかは、血中のアレルゲン特異IgEを測定することに判断する。アレルギーマウスに対して、各試料を経口投与した後のアレルギー反応について直腸温度、症状観察(死亡・痙攣・不自然な呼吸・行動減少・鼻や頭を掻く)、自発運動量などの項目について解析する。
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Causes of Carryover |
消化性および吸収性に関する実験が予定通りに実行できていないため、その分の予算を繰り越すこととなった。次年度のその実験を実施するため、次年度使用額が生じた。
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