2021 Fiscal Year Research-status Report
独居者生活音の定期的自己学習可能な確率モデルを用いた異常検出アルゴリズムの構築
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21K02145
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
田中 元志 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (50261649)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生活音 / 時間-周波数解析 / 特徴抽出 / 機械学習 / クラスタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
独居者の日常の生活活動音(生活音)から家屋内事故等の異常検出を目的に,生活と関連する音の解析と特徴量の抽出,および定期的な更新を行うためのクラスタリング方法について検討した。結果を以下にまとめる。なお,生活音などの採取においては,秋田大学の研究倫理審査委員会の承認を受け,被験者の同意を得て行った。 (1) 生活と関連する音の解析と特徴量に関する検討: 被験者(1人暮らし)の部屋内での生活音を,広帯域マイクロフォン1本を用いて録音(サンプリング周波数192 kHz,帯域幅80 kHz)した。周波数帯域80 kHzを15個のサブバンドに分割し,各バンド内の合計電力を特徴量として算出した。生活音の自己組織化マップ(SOM)を求めた結果,被験者によってSOMの形(分布)が異なり,生活環境の違いが見られた。また,夜間の音の検討として,マイクロフォンを口元近くに配置して録音(周波数帯域幅20 kHz)した寝息音の時間-周波数解析を行い,特徴量として12次MFCC,スペクトル重心,スペクトルエントロピーを求めた。呼吸間隔の推定を試みた結果,いずれかの特徴量が検出された区間では連続的な呼吸を推定でき,夜間の異常の有無の検出への利用が期待される。 (2) クラスタリング方法の検討: 生活音の発生確率算出に必要な確率モデルの作成に用いるクラスタリング方法として,対象に合わせて最適なクラスタ数に分類するU-K-means法の利用を検討し,大規模データに対応できるように改良を加えた。(1)で記録した生活音について,時間-周波数解析から12次MFCCを抽出し,改良U-K-means法と階層的クラスタリングのWard法を用いて分類した。クラスタ内のデータ分布,およびシルエット係数を比較した。その結果,改良U-K-means法は,階層的手法と同程度のクラスタリング性能である可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日常生活音の解析と特徴量の抽出,および定期的な更新を行うためのクラスタリング方法について検討した。 (1) 生活音の解析と特徴量に関する検討: 広帯域マイクロフォンを用いて被験者の部屋内で生活音を録音(サンプリング周波数192 kHz)した。被験者は男性4名とした。周波数帯域80 kHzを15個のサブバンド(三角窓)に分割し,各バンド内の合計電力を特徴量として求めた。生活音の自己組織化マップ(SOM)を求めた結果,被験者によってSOMの形が異なったが,その観察までであった。また,夜間の音の検討として,マイクロフォンを口元近くに配置して録音(周波数帯域幅20 kHz)した寝息音の時間-周波数解析を行い,特徴量として12次MFCC,スペクトル重心,スペクトルエントロピーを求めた。呼吸間隔の推定を試みた結果,いずれかの特徴量が検出された区間では連続的な呼吸を推定でき,異常の有無の検出への利用が期待される。しかし,未検出区間の被験者の状態の判別については今後の課題となった。 (2) クラスタリング方法の検討: 確率モデルの作成に用いるクラスタリング方法として,対象に合わせて最適なクラスタ数に分類するU-K-means法の利用を検討した。大規模データでは処理時間が膨大になったため,初期値の与え方を改良し,処理時間の短縮を図った。被験者3名の生活音について,時間-周波数解析から12次MFCCを抽出し,改良U-K-means法と階層的クラスタリングのWard法を用いて分類した。クラスタ内のデータ分布,およびシルエット係数を比較した。その結果,改良U-K-means法は,階層的手法と同程度のクラスタリング性能である可能性が示された。しかし,この方法を用いた実データでの検証と更新に関する検討には至らなかった。 残された課題については,2022年度の計画に組み込み,検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,①定期的更新型クラスタリング方法の検討と,②確率モデルとその定期的更新に関する検討を中心に行う。被験者(1人暮らし)の部屋に広帯域マイクロフォンを配置して長時間録音(サンプリング周波数192 kHz)した音を用い,時間-周波数解析を行う。特徴量として,周波数帯域80 kHzを15個のサブバンド(三角窓)に分割した各バンド内の合計電力,ログメルスペクトルなどを算出し,生活状況と発生する音の関連を調査した後,次の検討を行う。 ① クラスタリングの更新方法の検討: 特徴量のクラスタリングには,2021年度に検討した改良U-K-means法を主に用いる。生活音を定期的に取り込み,テータの追加によるクラスタの位置や大きさの変化を調べ,過去のクラスタ情報を更新する方法を検討する。 ② 確率モデル更新の検討: 最初の確率モデルの構築方法はこれまでと同じく,クラスタを数個の状態(グループ)に集約し,各状態に含まれるベクトル数,状態間の遷移などの情報から,状態遷移確率などの確率パラメータを求める。そして,クラスタの更新に合わせて,確率モデルを構成する状態数(クラスタ数)およびクラスタのサイズの更新,および状態遷移確率などの確率パラメータを更新(再計算)する方法の検討を行う。比較のため,自己組織化マップ(SOM)を用いた検討も並行して行う。 夜間睡眠時の音や足音を利用する異常検出についても並行して検討を行う。各音の時間-周波数解析からログメルスペクトル,スペクトル重心,スペクトルエントロピーなどを特徴量として算出し,機械学習の利用やそれを用いた識別・判別方法を検討する。 本研究では,生活音の録音が必要であり,独居者数名に被験者として協力してもらう。このとき,転倒音などの異常模擬音も録音する。そのため,本年度においても秋田大学の人を対象とした研究倫理委員会の承認を受けた。
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